乳酸菌ブームの主役「ヤクルト1000」に成長の壁 増産投資も実施、今後は生活必需品になれるか
東洋経済オンライン / 2024年6月5日 10時30分
「睡眠の質向上」や「ストレスの緩和」をうたい消費者の支持を獲得。乳酸菌飲料市場を一気に押し上げてきた「ヤクルト1000」に、初めて成長の壁が訪れている。
【図表で見る】ヤクルト1000のヒットが業績を大幅に押し上げた
ヤクルト1000の全国発売は2021年。従来のヤクルト商品よりも単価が高く採算もよい同商品のヒットで、ヤクルト本社の国内飲料・食品の事業セグメントは急成長。2019年度に182億円だったセグメント営業利益は、2023年度に495億円まで拡大している。
今やヤクルト本社の収益柱に成長したヤクルト1000。しかし、実は昨年度、会社の数量目標を達成できずに終わってしまったのだ。
なぜ計画未達になったのか
ヤクルト1000は店頭専用商品が「Y1000」、宅配専用商品が「Yakult(ヤクルト)1000」と分かれている。
店頭品は2023年度、期初に1日当たり95万本の販売計画だったが、期中に上方修正し、最終的に102万本で着地。2022年度と比べて50万本増と好調だった。
一方、宅配品は期初に1日当たり250万本の計画だったが、最終的に216万本で着地。2022年度の203万本から増加したが、6%の伸びにとどまった。この結果、2023年度の国内飲料・食品セグメントの営業利益は前期比4.4%増の495億円となり、期初計画の534億円に対して未達に終わった。
未達の背景には、増産に対する期待があった。宅配品の生産量は既存客の需要には応えられていたが、新規顧客へ提案するには不十分だった。在庫を切らすリスクを避けるため、ヤクルトレディの営業活動にも制限をかけざるを得なかったのだ。
そんな中、今年1月に待望の静岡県・富士小山新工場が稼働。最大生産能力は宅配品が1日当たり60万本、店頭品が同25万本だ。これでヤクルトレディも営業にアクセルを踏み込み、顧客獲得が進むとみられていた。
それでも結局、販売本数は計画に届かなかった。ヤクルト本社の大濱弘和・広報室 IR室長は「増産で一気に顧客を獲得する計画だったが、簡単ではなかった」と肩を落とす。
宅配品の営業はこれまで、主に既存顧客へアプローチして伸ばしてきた。さらなる成長には、接点のない新規顧客にも働きかける必要がある。「新規顧客の獲得には時間がかかるとわかった。ヤクルトレディの教育を見直し、体制を整える。着実に価値の訴求をして、少しずつ売り上げを上げていきたい」(大濱室長)
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