日テレ・小学館の「調査報告書」に釈然としない理由 「セクシー田中さん」問題はどこに向かうのか
東洋経済オンライン / 2024年6月5日 23時0分
この“認識の齟齬”と“ミスコミュニケーション”は事態の原因として小学館も挙げているところですが、第三者目線で見たら「言った言わない」レベルのような話。日本テレビと小学館の両スタッフが、ともに「この程度の伝え方でわかってくれるだろう」「これまで通り理解してくれているはず」という自分目線での甘さがうかがえます。
両社に限らずテレビ局と出版社によるドラマ制作は昭和時代から長年続いている商習慣であり、だからこそ「この程度の伝え方」「これまで通り」で済んできた歴史がありました。しかし、「令和の時代に対応したものになっているか」「当時からの問題点は改善されているか」と言えば、あやしいところがあるのです。
出版社にとってドラマ化は今も重要
その1つがドラマ制作サイドによる原作の取り扱い。基本的に「原作者の意向を優先させよう」と思いつつも、「視聴率獲得とスポンサーの理解」「時間・人員・予算の制約」などを理由に、「ドラマ制作サイドにとって都合のいい解釈で進めてしまう」というケースがしばしば見られます。
実際、調査報告書の「リテイク(撮り直し)の発生」という記述にそれが表れていました。
去年10月、原作者が小学館を通してあるシーンの問い合わせしたところ、撮影は5日後の予定だったにもかかわらず日本テレビ側のスタッフは「すでに撮影済み」と嘘の回答。嘘をついた理由は、「出演者とスタッフが2カ月かけて入念に準備を重ねてきたため、内容の変更は撮影現場に多大な迷惑がかかると思い、とっさに事実と異なる回答をしてしまった」。ところが、のちに原作者がこの事実を知り、不信感を深めてしまったのです。
では、なぜ出版社はそんなドラマ制作サイドの姿勢について厳しく指摘しないのか。なぜ原作者や原作をもっと守ろうとしないのか。
今年1月から30人を超える大手出版社の編集者にその理由を尋ね続けてきましたが、ほぼ全員が「ドラマ化してもらうこと自体が重要だから」と語っていました。
今なお全国ネットでドラマ化されることの影響は大きく、ゴールデン・プライム帯(19~23時)の放送であればなおのこと。人気俳優が演じることもあって、「原作となる漫画や小説が大量に売れるため、出版社と原作者の双方にメリットが大きい」というシンプルな理由に尽きるのです。
詳しくは後述しますが、実は民放各局のドラマ制作現場では“オリジナルへの回帰”が進んでいて、それを出版社の人々は知っているだけに、「ドラマ化が決まったものに関しては、できるだけ円満に事を進めたい」というのが本音でしょう。
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