日テレ・小学館の「調査報告書」に釈然としない理由 「セクシー田中さん」問題はどこに向かうのか
東洋経済オンライン / 2024年6月5日 23時0分
もちろんドラマがヒットするほど原作の売り上げは伸びるため、出版社側としては「ドラマ制作のプロに任せたほうがいい」という考え方がベース。また、ドラマ制作には、放送の尺、出演者のスケジュール、予算、コンプライアンスやスポンサーへの配慮などの事情があるだけに、原作者も「ドラマ制作のプロに任せ、多少の疑問がある程度なら改変を受け入れる」というケースが多くを占めています。
しかし、原作サイドの関係者、ドラマ制作サイドの関係者ともに、「原作者の思い入れが深い作品や、『ここだけは変えてほしくない』という点への配慮が十分ではなかった」というケースがあるのも事実でしょう。
日本テレビの調査報告書に「プロデューサーの業務量・人数についての見直し」という改善策の記述があり、小学館の調査報告でも「担当した2人のうち、社員Aは激務だった」ことが明かされたように、人数や仕事量などの面で余裕がないことを含め、「十分な配慮が行き届いていない」という危うい背景があるのです。両社の調査報告書を読んだ限り、この点で原作者の芦原妃名子さんは心身ともに労力を強いられていた様子がはっきりとうかがえました。
つまり、「認識の齟齬やミスコミュニケーションはテレビ局と出版社によるものであって、原作者や脚本家に非はないどころか、防ぐことが難しいもの」ということ。
そもそも、出版社やテレビ局は原作者や脚本家にとって重要な取引先であるだけに、「スタッフの意向に沿ったほうがいいだろう」「これを言ったらわがままとみなされるのではないか」などと思っている人が少なくありません。最終的な引き金となったSNSへの書き込みも、そんな我慢を重ねた結果の行動に見えますし、各過程で認識確認しておくことがもっと必要だったのでしょう。
契約書の締結とSNSの危機管理
一方、小学館の「第4 考察」には、検討すべき問題点として「1 小学館と日本テレビの契約関係」「2 芦原氏が日本テレビに対して脚本家の交代を求めたこと等について」「3 原作者の思いと脚本家との乖離について」「4 危機管理体制」「5 識者見解、世評について」が挙げられていました。
「1」の契約関係については、これも昭和時代から続く悪しき商習慣。ドラマ化は大企業同士のビッグプロジェクトであり、著作物を扱っているにもかかわらず、日本テレビは放送前に原作者や脚本家と契約書を締結していませんでした。しかもそんな不確かな関係性のうえで、内容の改変に対する難しいやり取りを重ねていたわけですから、まさに綱渡りの制作であり、「まさかの放送中断や打ち切り」もありえたのではないでしょうか。
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