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生物学者が歳をとってわかった「人生の意味」 人間にとって「自我」こそ唯一無二のものである

東洋経済オンライン / 2024年6月6日 18時0分

人間と違って動物は苦痛から逃れたいとは思うだろうが、死ぬことに恐怖を感じたりはしないだろう。動物は脳の構造からしても、人間のように確固たる自我を有していないので、そのような哲学的思考をすることはまずあり得ない。

人間が死を恐れるのは、自我がなくなるからだ。現在の脳科学によると、自我は前頭連合野に局在するらしい。この部分は他の動物と比べたときに、人間がいちばんよく発達している。

個人の内的な感覚としては、自我は自分以外の全存在と拮抗する唯一無二の実在である。死ぬということは、自分以外の存在物のほとんどが無傷のまま保たれるのに、自分にとって唯一無二の自我が喪失することを意味する。

つまり死を怖がるのは、自我の喪失を恐れているからであり、生きている人間にとっての自我とは、それほど大切なものだとも言える。

自分の生き方は「自分で決める」ことが大切

だからせめて、生きている間は自我をしっかりと大事に保っていきたいものである。そのためには、自分で自分の生き方みたいなものをしっかり決めて、それをなるべく守っていくことが大切だ。

自我を守るといっても「自分の好き勝手をしてデタラメに生きろ」ということではなく、自分で規範をつくることが重要だ。他人から与えられた規範ではなく、自分で一種の「マイルール」をつくり、それを守っていくという生き方だ。

このときに法律に違反するようなマイルールではダメなのだが(ダメという意味は、倫理的や道徳的にダメということではなく、この現実世界では法律を守らないと生きづらいからという意味だ)、そうでなければどんなルールをつくろうとも、それは自由だろう。

最近の研究によると、人類の自然寿命は38歳くらいだという。チンパンジーもゴリラもネアンデルタール人もだいたいそのくらいで、生物学的には人間も同じくらいだというのだ。

それなのに人間の寿命だけが延びたのは、医療と食べ物の影響だと考えられる。

40歳以降の人生は「オマケ」のようなもの

ともかく、本来の寿命が40歳くらいまでならば、それ以降はオマケの人生のようなものである。だったら儲けものだと思って、好きなように楽しんだらいい。世間のルールにとらわれず、法に触れない範囲で自分のルールを持って生きていけばいいのだ。

健康のためだといって無理をして食事を制限したり、禁煙や禁酒する必要もない。

それをやったからといって長生きするとは限らない。かつてフィンランド保健局が、40~45歳の働き盛りの男性1200人を対象にして「健康管理をしっかり行った群」と「なんの指導もしない群」に半々に分けて追跡調査を行った。

15年後の結果はどうなったかというと、管理された人は67人、管理されなかった人は46人亡くなったという。管理されていた人のほうがたくさん亡くなっていたのだ。

このことの意味は、管理したところで特別に健康になるわけではなく、かえって管理されることのストレスのほうが害になるということなのだろうと私は解釈している。そしてこのことは今の日本にも当てはまることだと思っている。

池田 清彦:生物学者

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