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西武が「赤坂プリンス跡地」を切り離す戦略的狙い グループ最大資産の売却額は3000億円以上か

東洋経済オンライン / 2024年6月6日 7時20分

だが、このビジネスモデルはコロナ禍で大打撃を受ける。主力の鉄道の利用客数が激減しただけでなく、強みであるはずのホテルやレジャー施設も大きなダメージを負った。

そこで、ここ数年は不動産を保有し賃料を得るのではなく、取得した不動産の価値を高めて売却する「回転型」のビジネスモデルへの転換を模索してきた。同時に、保有資産を圧縮して経営効率を高める「アセットライト戦略」を推進してきた。

今年5月に策定した新中期経営計画でも「不動産事業を核とした成長戦略」を掲げ、その一環として「不動産回転型ビジネス」の強化を表明した。ガーデンテラスの売却は、その回転型ビジネスの第1弾という位置づけになる。

ただ単に、資産を売却してキャピタルゲインを狙うだけでなく、アセットマネジメント機能を持つ資産運用会社を設立し、私募ファンドや私募REIT(不動産投資信託)の運用を通じた不動産運営にもかかわっていく計画だ。

前出の小川氏は、「西武グループが保有するすべての物件が、聖域なく流動化の検討対象となる」と強調する。

西武が不動産回転型ビジネスを標榜する背景には、「総資産の重さ」がある。

関東私鉄大手のある幹部は、皮肉を込めてか次のように話す。「当社には回転させていくようなアセットがそれほどない。一方、西武さんは大きなアセットがある。いろいろ持っておられる」。

西武グループは1912年の創業(西武鉄道の前身である武蔵野鉄道の設立)後に、鉄道事業だけでなく、軽井沢や箱根の別荘地、そして東京近郊での住宅地開発など開発事業を基軸としてきた側面がある。

「土地の堤」――。開発事業に力を注いだ創業者の堤康次郎氏には、このような異名があるほどだ。

資産効率が低く「稼ぐ力」が見劣り

西武グループは開発事業をテコに、別荘地・住宅地の開発、鉄道、流通、レジャーなど事業を多角化し、業容を拡大してきた。そういった経緯から、現在もホテルやゴルフコース、商業施設、遊園地、そして競艇場まで、多岐にわたる事業用の資産を持つ。

結果、競合他社よりも総資産に占める有形固定資産の割合が高い。2024年3月期末で西武HDの有形固定資産は約1兆3800億円。これは総資産の84%を占める。

関東私鉄最大手の東急の場合、保有する有形固定資産は約1兆8200億円と西武を上回るが総資産に占める比率は68%だ。小田急電鉄をみても有形固定資産は1兆0100億円で総資産比は77%。西武の資産保有比率の高さが目立つ。

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