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西武が「赤坂プリンス跡地」を切り離す戦略的狙い グループ最大資産の売却額は3000億円以上か

東洋経済オンライン / 2024年6月6日 7時20分

見過ごしてはいけないのは、資産効率の低さから「稼ぐ力」が見劣りすることだ。下記の表を見てほしい。西武の総資産に占める利益の割合は、群を抜いて低い。セグメント別の営業利益を見ても、賃貸収入を主とする不動産事業も小粒感が否めない。

資産のスリム化による経営体質の改善、そして回転型ビジネスを構築し収益を底上げする対策が急務というわけだ。

西武が不動産流動化を急ぐもう1つの背景には、株主からの圧力もある。

5月14日の大量保有報告書で、3Dインベストメント・パートナーズが西武HD株式の5%超を保有したことがわかった。

3Dはシンガポールを拠点とするアクティビスト(物言う株主)だ。保有目的を「純投資及び状況に応じて、経営陣への助言、重要提案行為を行うこと」としている。少なくとも、今年3月上旬ごろから、少しずつ西武株式を買い集めていたようだ。

3Dと西武が直接対話しているかどうかは不明だ。「株主・投資家について、個別のやりとりを公表することは控える」と、広報担当者は口を閉ざす。

ただ、西武がどのような要求を受けるのかを推察するうえで参考になる前例がある。3Dが15%超を出資するサッポロホールディングスでのケースだ。

3Dの動きと関係なく「売り物」を計画

サッポロは「恵比寿ガーデンプレイス」などの不動産資産を持つ。それらから安定的な利益を出す不動産事業が、利益率の低い酒類事業を補う形だ。そのような不動産頼みの経営から「サッポロビル」とも揶揄される。

3Dは2022年からサッポロに経営改革を求め始め、不動産賃貸収入により経営の甘えが生じ、酒類事業の低収益性を長年放置してきたと指摘した。結果、3Dの推薦した社外取締役2名が就任。保有不動産への外部資本の導入・流動化なども検討する方向へとサッポロに舵を切らせた。

沿線人口の先細りが懸念されるとはいえ、西武に対し鉄道事業からの撤退を要求するとはさすがに考えにくい。サッポロと同様に、不動産の流動化などを突き付けてくる可能性はある

ただ、物言う株主が“来訪”したからと言って、西武側に動揺した様子はない。「これまでも多くの投資家と株主価値の向上に向けて積極的に対話を行っており、その中で株主・投資家の皆さまからの声を経営に生かしてきた」(広報担当者)。

資本効率化は喫緊の経営課題。3Dの要求に関係なく、キャピタルリサイクルといった成長戦略を推し進める算段だ。

西武はガーデンテラスのほかにも、2026年度までに複合ビル「ダイヤゲート池袋」や既存ホテル、高級マンション「西麻布レジデンス」について、投資ファンドなどへの組み入れを含めた流動化の具体的な検討に着手する。

不動産市場にとっては「売り物」が多数出回ることを意味する。西武の一挙手一投足を多くの関係者が固唾をのんで見守る。

梅咲 恵司:東洋経済 記者

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