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株価はピークの8割減、優等生「エムスリー」に異変 時価総額はコロナ禍の7兆円から一時1兆円割れ

東洋経済オンライン / 2024年6月8日 7時20分

エムスリーは医師向け情報サイトを運営する後発組のケアネットやメドピアなどと比べても、今なお強固な会員基盤を持つ。

その一方で、「医薬品情報を提供するたびにかかる手数料とは別に、年間の基本料金も上乗せされるエムスリーは高い」(同業幹部)との声もあった。コロナ特需が一服し、製薬企業の財布のひもが一気に固くなる中、高額なエムスリーとの契約内容を見直す顧客は少なくなかったとみられる。

製薬企業の姿勢の変化も見逃せない。UBS証券の葭原友子アナリストは「コロナ禍を経て、国内でも希少疾患やがんなどの『スペシャリティー領域』での新薬開発やプロモーションを重視する傾向が強まっている。こうした構造的な変化にエムスリーのサービスが追いついていない可能性がある」と指摘する。

市場規模の大きい糖尿病などの生活習慣病向けの医薬品は、安価な後発薬との競争や薬価引き下げにさらされ、成長余地が乏しい。そうした中で、多くの製薬企業が希少疾患の領域に軸足を移している。患者数は限られる反面、相対的に高い収益性が見込めるからだ。

前出と別の同業幹部は「コロナ禍が明けて以降、マーケティング予算の中で、スペシャリティー領域を中心とした新薬にお金を集中させる動きが顕著になった」と明かす。

これまでは、国内の9割超の医師をカバーするm3.comで広く情報発信すれば「広告効果は最強」(業界関係者)とみられてきた。しかし、治療の難易度が高い希少疾患やがんの薬を確実な処方へとつなげてもらうためには、その分野で実績がある専門医に焦点を絞ったアプローチや患者の個別ニーズの把握など、より踏み込んだ支援が必要となる。

屋台骨の停滞が長引く現状は、エムスリーも危惧している。谷村格社長は4月の決算説明会で「(コロナでの)一時的な需要で非常に忙しくなり、プロダクトの本質的な改善がややおろそかになっていた」と語った。

今後は製薬マーケティング支援の再成長に向けて、顧客企業の生産性を向上させる新サービスの開発や、同社が保有するデータを活用したコンサル型の提案を強化するという。

m3.com上のビッグデータや、電子カルテなど実際の医療現場から得られる情報を基にしたデータから、AI技術を使って特定の疾患領域でのニーズなどを予測分析するような支援策も拡大させる。

見定めづらい「次の柱」

会社側は今2025年3月期について、増収増益を見込んでいるものの、製薬マーケティング支援が回復するタイミングに不透明感が残るとして、売上高・営業利益ともに幅を持たせた計画を公表した。

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