柴咲コウ『蛇の道』で描く「答えのない生きざま」 驚くほど流暢なフランス語に対する絶賛の声
東洋経済オンライン / 2024年6月8日 12時0分
柴咲の瞳に映るのは、無数の冒険と挑戦の記憶だ。彼女は一人っ子だったため、独りで過ごす時間が豊富にあった。その時間を利用して想像の翼を広げ、無限の世界を探索していた。
「今でも、放っておくと3時間ぐらいぼーっと考え事をしてます」
その時間こそが彼女のクリエイティブな原動力となっている。思索の中でさまざまなアイデアを生み出し、それを実際に行動に移すことに喜びを感じているようだ。
「頭の中にとどめておくのではなく、実際に行動して形にしてみることが好きです。結果を追求するのではなく、そのプロセス自体に価値を見いだし楽しんでいます」
その姿勢こそが、彼女がつねに新しい挑戦に挑み続ける理由だと実感した。それは日本からフランスへと舞台を変えても変わらない。
『蛇の道』で描く「答えのない生きざま」
柴咲コウ主演の映画『蛇の道』が6月14日に公開される。全編フランスロケの日仏共同製作で、時空と国境を越える“リベンジ・サスペンス”だ。
物語は、8歳の娘を殺された男アルベール・バシュレ(ダミアン・ボナール)が、心療内科医の新島小夜子(柴咲コウ)の協力を得て復讐を誓うところから始まる。2人は犯人を突き止めるために財団の関係者を次々と拉致し、徐々に真相が明らかになっていく。
徹底的な復讐の果てに待つものとは何か?
しかし柴咲の言葉からは、今作が単なる復讐劇ではなく、深い人間理解と社会への問いかけが込められていることがうかがえる。
「すべてを悪と決めつけるのは簡単ですが、悪に落ちた人物に焦点を当てることで、その背後には事情があり、理由があることを描き出します。法律やルールの上では裁きを受けなければならない存在ですが、その闇の中にいる彼らの歯がゆさやジレンマを感じることで、人間社会における善悪の成り立ちを考えるきっかけになります」
柴咲自身も「そういうミステリーやサスペンスが大好きです」と語り、その魅力を独自の見解で解説する。
「この映画を観終わった後に『すっきりしてよかった』と感じることはないでしょう。誰かを憎み、『復讐してやる』と思った瞬間、救われない感覚が襲います。そのモヤモヤを観る側も感じるかもしれない。しかし、それでも共感できる部分があります。人間の不完全な一面、きれい事では済まされない行動、許せない出来事に遭遇したときの感情など、これらが心に刺さるのです」
観る者に深い問いを投げかける『蛇の道』。そんな作品を柴咲は、「答えのない生きざま」と表現する。
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