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映画「バティモン5」に映る"移民たちのリアル" 映画撮影の背景について、ラジ・リ監督に聞く

東洋経済オンライン / 2024年6月8日 13時30分

そんな街で育った、ラジ・リ監督は1978年生まれ。マリにルーツを持ち、この地にあるバティモン5(2020年に解体 ※バティモンは建物の名前)で育った。1990年前半から、地域全体の再生計画が始動し、1994年にはボスケ団地にあるバティモン2が爆破により取り壊された。劇中でも爆破シーンがあるが、これこそがラジ・リ監督の原風景なのだ。

人種などを理由とした職務質問も

行政が自分たちにとって都合の悪い者にレッテルを貼り、排除しようとする。それは、本作だけではなく、世界的に見られる傾向であろう。

例えば、日本でも同様の事象がある。もちろん、違法行為をしている外国人は日本のルールを守れない者として国外退去になるべき対象だと言えるだろう。

しかし、現在、人種などを理由に必要のない職務質問を繰り返し受けている人もいる。そして、そのことが憲法に違反する差別であるとして、2024年1月には、外国出身の3人が国などに賠償を求めて提訴した。

こうした日本の現実は、ラジ・リ監督の前作『レ・ミゼラブル』でも扱われたBAC (犯罪対策班)とも状況が近似する。

筆者は実際に日本に帰化した外国人から、警察官から職務質問を受けて、在留カードを見せたところ、「こいつ、帰化してやがる」と言われた、という話を聞いたことがある。

残念ながら、こうした外国人差別は、ビジネスの世界にも存在する。

日本企業から信用されたいために、先に代金を支払ったものの、商品を納品してもらえなかった外国人経営者の企業のケースもある。

在日外国人は、このような日本人に対して怒るというよりは、諦めてしまっているようだ。

差別的な扱いを受けた人の中には、永住権取得者や、帰化した人もいる。長い間、日本の社会で税金を払って、社会に根付いているのになぜ? と思う反面、母国へは帰りたくないと話す人もいた。日本ほど、清潔で快適な国はないからだという。また、日本に来るために留学費用を含め、多額の資金を投資している。それならば多少不快なことは我慢しよう、という理由のようだ。

いつまでたっても肌の色で差別される

しかし、これが、「フランスでフランス人として育った」ラジ・リ監督のように2世・3世になると不満だけが募るのではないか。この点についてラジ・リ監督に聞くと、以下のような回答があった。

「親の世代は仕事を求めてフランスに来て、稼いだら祖国に戻るという人もいた。ところが、私たち2世・3世は、フランスで生まれ育って、自分の居場所はここしかない。にもかかわらず、周りからは『君達は半分ぐらいフランス人かな』と言われてしまう。例えば、アメリカなら、そこに住んでいればアメリカ人なのに、ここではいつまでたっても肌の色で差別されてしまう」

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