鉄道員にオヤジと呼ばれたSL「キューロク」の記憶 大正生まれ9600形、国鉄最後の現役蒸気機関車
東洋経済オンライン / 2024年6月8日 6時30分
大正時代に登場した9600形蒸気機関車は、その形式から「キューロク」と呼ばれて親しまれた。貨物列車用に造られた機関車ということもあり、同時期に製造されて2024年春まで1両が「SL人吉」として活躍していた旅客列車用の8620形、通称「ハチロク」の陰で目立たない存在だった。
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国鉄最後の「現役SL」だった9600形
しかし、このキューロクこそ、保存用ではない国鉄最後の「現役」蒸気機関車だったことはSLマニアの間でもあまり知られていない。
国鉄最後の「さよならSL」としては、1975年12月14日に室蘭本線を走ったC57形135号機が知られているが、これはSLが牽く最後の旅客列車で、実はこれ以後もキューロクは北海道の追分機関区にて細々と入換作業に従事していた。1976年3月2日、国鉄の営業用蒸気機関車最後の日まで残ったのがこの機関区の3両のキューロクだった。華々しく看取られることなく、キューロクは国鉄最後の蒸機として引退した。
「デゴイチ」D51形や「貴婦人」C57形などの華やかな活躍とは対照的な存在ながら、ローカル線で貨物列車を牽いて日本の経済を支え、大正生まれながらSL最後の日まで走り続けたキューロクの生涯をたどってみたい。
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9600形は大正初期の1913年に登場した、日本初の本格的な量産の国産蒸気機関車だ。明治時代の鉄道創業時から機関車は輸入していたが、9600形、そして同時期に登場した8620形からは本格的に国産化されることとなった。貨物専用の9600形はボイラーを台枠の上に置く構造を採用し、火室を大きくして出力を大幅に増したことで重量貨物列車の牽引も可能になった。
太いボイラーと、速度より馬力を優先したためか動輪の直径が8620形の1600mmに比べて1250mmと小さく「粘り」のある運転が特徴で、そのずんぐりむっくりとしたスタイルは日本人の体形に例えられ、鉄道員からは「キューロクとっつあん」とか「キューロク親父」などと呼ばれて親しまれた。
北海道ならではの「二つ目」
ここから先は、親しみを込めて9600形ではなくキューロクと呼びたい。戦前は幹線でも使用されたキューロクだが、戦後に配置されていたのは主に北海道と九州地区だった。それは主に石炭輸送に従事するためだった。
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