"梅クライシス"日本一の産地で収穫量急減のなぜ 南高梅の産地・和歌山県、梅農家が悲鳴
東洋経済オンライン / 2024年6月8日 11時30分
近年、不作に見舞われた年はあった。近畿農政局のデータによると、2023年までの過去10年間の年間平均収穫量は6万1400トン(全国9万5700トン)。しかし2020年は暖冬の影響などで4万1300トン(全国7万1100トン)まで落ち込んだ。
真造さんは、今年の深刻度合いを2020年と比較すると「実感として2倍くらいひどい。収穫量は平年の2割5分から3割近くにとどまるのではないか」と話す。「異常事態を通り越して、皆どうしようかという感じになっている」と明かす。
雹はこれまでも局所的に降ることがあったが、今年は広範囲で発生した。少ない梅の実が降雹被害を受け「広域で7割ぐらい傷がついてしまった。これも経験がない」と振り返る。
和歌山県地方気象台によると、3月20日は近畿地方の上空約5500メートルに氷点下36度以下の強い寒気が流れ込み、降雹をもたらした。
みなべ町や田辺市など8市町で梅の果実に傷がつき、県全体で被害面積4168ヘクタール、被害金額は約21億5300万円に上った(県農林水産部)。2006年に記録した約25億5000万円に次ぐ2番目に大きい被害額だ。
【2024年6月11日12時48分 追記】初出時、被害額の大きかった年を上記に修正しました。
しかし、この被害額について真造さんは、「そもそも、雹で被害を受けた梅の数自体は少なかった。例年並みに結実していれば、過去最大の被害額になっていただろう」との見方を示す。
不作の原因は?
梅の不結実の原因は一体何だったのだろうか。南高梅は自らの花粉で実をつける「自家受粉」ができないため、一緒に植えてある他品種の梅の花粉をミツバチが運び南高梅の受粉を助けている。気温低下、多雨、強風などの厳しい気象状況は、ミツバチの活動を妨げてしまう。
県果樹試験場うめ研究所の綱木海成研究員は、さまざまな要因があるが、「今年に関してはミツバチの影響を大きく受けたとは言えない」と説明する。同研究所内では、ミツバチの活動に適した気象条件の日数を記録。それによると平年並みの活動時間は確保されており、「ミツバチはある程度活動していた」と語る。
そのうえで不作の要因は、開花(例年2月)前の気温が平年よりも「2度ほど高かった」ことを挙げ、前回不作の2020年と類似しているという。暖冬で開花が早まり、「咲いたばかりの花に雌しべがない、枯れているなど不完全な花の数が多かった」と分析している。
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