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オペラって何?400年の歴史を5分で解説!後編 「オペラ大図鑑」でたどるオペラの壮大な歴史

東洋経済オンライン / 2024年6月9日 18時1分

19世紀はまた国民派「音楽」が誕生した時代でもある。ロシアではミハイル・イヴァノヴィチ・グリンカがスラブ民謡を借用し、モデスト・ムソルグスキーは《ボリス・ゴドゥノフ》でロシアの史実を舞台に持ち込んだ。だが、西欧の主要なレパートリーに加わったのは《エフゲニー・オネーギン》や《スペードの女王》を書いたロマン派の作曲家、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーだ。同様に、チェコではベジドフ・スメタナが国民オペラの父と称賛される一方、レオシュ・ヤナーチェクは《イェヌーファ》と《カーチャ・カバノヴァー》のような、さらに洗練された作品を創作した。ヤナーチェクのこの2作品は、今ではモーツァルトの作品と並んで上演されている。

現代オペラの多彩な顔

20世紀ほど、さまざまなオペラの動向が同時進行する状況が明白な時代はなかった。リヒャルト・シュトラウスの《サロメ》と《エレクトラ》はオペラ界全体に衝撃を与えた。その後すぐに、アルノルト・シェーンベルクが和声を拒否して無調(特定の調によらずに構成された音楽)を選択することで伝統的な音楽概念を捨て去った。

1920年代には、シェーンベルクとアルバン・ベルクは十二音音楽をオペラに導入し、シェーンベルクは《期待》と《モーゼとアロン》を、アルバン・ベルクは《ヴォツェック》と《ルル》を作曲した。だが、彼らが近代音楽を再定義した一方で、より伝統的なオペラは今も引き続き作曲されている。

しかし第2次世界大戦の終結以来、オペラは実験場にも似た様相を呈しはじめた。カールハインツ・シュトックハウゼン、ルチアーノ・ベリオ、フィリップ・グラスなどの作曲家が、セリー技法(音色、テンポなど音以外の要素も数列化)やミニマル(音楽要素の反復を特徴とする)、電子音楽、さらには無音やノイズの利用までさまざまな表現法を試みた。だが今のところ、戦後の作曲家のうち、世界中で頻繁に演奏されるのはベンジャミン・ブリテンだけだ。《ピーター・グライムズ》と《ビリー・バッド》によって、ブリテンは力強い台本を、深く心を動かす音楽へと導くことに成功している。

過去と同じように今も、力強さとオリジナリティによってオペラをつねに前進させることは、作曲家にとって困難な課題だ。新作を委嘱するオペラハウスの存在は、オペラの未来の保証につながり勇気づけられる話といえよう。結局、今は非常に奇妙に感じられる光景や音声の中に将来の傑作が潜んでいる可能性があることは、オペラの歴史が証明している。

アラン・ライディング

レスリー・ダントン=ダウナー

加藤 浩子(監修)

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