道長も困惑した「一条天皇」暴走する"皇后への愛" 花山院の藤原忯子への寵愛も格別なものだった
東洋経済オンライン / 2024年6月9日 10時30分
一方で、道長に付いて宇治の遊覧に出かけた公卿は、藤原道綱と藤原斉信の2人だけ。大半の公卿はこれから先の展開が読めずに、様子見を決め込んだようだ。
政権を盤石にしつつあった道長にとって、一条天皇の定子への思い入れは、さぞ厄介なことであっただろう。
一条天皇とて、何も定子のみを寵愛したわけではない。
長徳2(996)年には、藤原公季の娘・藤原義子が入内して女御となり、さらに、右大臣の藤原顕光の娘である藤原元子も入内して、女御になっている。さらに2年後には、藤原道兼の娘・藤原尊子が入内している。
定子が「長徳の変」によって没落すると、周囲が色めき立ち、各方面から働きかけがあった結果だろう。
それにもかかわらず、周囲から反発を受けてまで、定子を寵愛したのだから、よほど思いが深かったのだろう。
思えば、かなりの女好きだった花山院もまた、最愛の女御である藤原忯子への寵愛は、格別だった。忯子が病死して失意の底にいたところを、藤原道兼に騙されて出家。その後に、一条天皇が即位している。
一条天皇からすれば、「長徳の変」さえなければ、最愛の定子が悲劇的な運命をたどることはなかった……という思いもあったことだろう。
この事件は、藤原伊周と弟の隆家らが、花山院に矢を放ったというもの。原因は、伊周が一条邸の光子のもとに通っていたところ、そこに花山院がいたため、嫉妬して暴挙に出ることになった。だが実は、花山院は、光子ではなく、その妹の儼子(たけこ)のところに通っていた。
女遊びが治らなかった花山院
どうしても、伊周の愚かな勘違いがクローズアップされがちだが、花山院が出家した身でありながら、女遊びが治らなかったことも事件の背景にはある。
しかも、花山院が出家してもなお通った儼子は、最愛の忯子の妹だ。おそらく、花山院は忯子のことが忘れられず、妹の儼子にその面影を観たのだろう。
花山院さえあの場所にいなければ――。そんな思いがよぎりながらも、亡き忯子を思慕し続ける花山院の執着に、一条天皇はどこか共感したのではないだろうか。
【参考文献】
山本利達校注『新潮日本古典集成〈新装版〉 紫式部日記 紫式部集』(新潮社)
倉本一宏編『現代語訳 小右記』(吉川弘文館)
今井源衛『紫式部』(吉川弘文館)
倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社現代新書)
関幸彦『藤原道長と紫式部 「貴族道」と「女房」の平安王朝』 (朝日新書)
繁田信一『殴り合う貴族たち』(柏書房)
真山知幸『偉人名言迷言事典』(笠間書院)
真山 知幸:著述家
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