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沈む日本、いま必要なのは「団塊ジュニアの反抗」だ 「物価高で定額減税」の矛盾を無視していいのか

東洋経済オンライン / 2024年6月9日 8時30分

そう、日本社会はゆるやかに衰退したのではない。1990年代の後半に明らかな転換が起きていた。だが、主要先進国の地位にあぐらをかき、歴史的な変化に気づくことなく、いつかなんとかなるだろうと考え、私たちはいたずらに時を消費してきたのだ。

まるで平成の貧乏物語

この鈍感さは、平成の31年間で、決定的な変化をもたらした。

日本の1人当たりGDPは、平成元年の世界4位から平成31年の26位へと順位を下げた。企業時価総額トップ50社を見ても日本企業が32社を占めていたのに、平成の終わりにはたった1社になった(現在ではトップ100を見ても1社しかない。それはトヨタだが、そのトヨタが認証不正を行ったことは象徴的である)。

男性労働者の収入減をおぎなうために、女性の非正規労働者が増えた。共稼ぎ世帯数は約6割増え、専業主婦世帯の2倍をこえるようになった。それなのに、勤労者世帯の実収入のピークは1997(平成9)年だった。

世帯収入300万円未満の世帯が全体の31%、400万円未満が全体の45%を占めるようになったが、これは、平成元年とほぼ同じ割合だ。ちなみに、平成の終わりには2人以上世帯の3割、単身世帯の5割が貯蓄なしと答えている。

まるで平成の貧乏物語だ。いや、もっと現実を的確に語るならば、日本は、先進国と発展途上国の境界線に立たされるようになった。

日本のGDP総額が7割の人口しかいないドイツに追い抜かれた、という報道が世間を騒がせた。為替の動向次第では、1人当たりのGDPも韓国や台湾に追い越されるのも時間の問題である。

私がとりわけ深刻だと思うのは、途上国と共通する社会的な信頼度の低さだ。

じつは所得水準と他者への信頼度には、強い相関関係がある。日本はOECD加盟国のなかで主要先進国とその他の国の境界に位置しており、所得と信頼度で見ると、リトアニア、エストニアと同じグループにいる。

もちろん私たちは状況を静観していたわけではない。政府も必死になって経済を成長させようとしてきた。

思い出してほしい。小さな政府と規制緩和を訴えた新自由主義、財政金融政策の機動的な出動をうたったアベノミクス、そして分配による成長をめざした新しい資本主義、いずれも経済成長を実現するための政策パッケージだった。

だが、冷静に見てみると、政府を小さくすれば成長する、いや政府を大きくしたほうが成長する、いやいや経済政策ではなくて分配政策が大事だ……成長を説明するロジックは混乱を重ねてきた。

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