「話を聞いてもらえない」職場が陥る負の連鎖 部下の話を聞かず自分ばかり話していないか?
東洋経済オンライン / 2024年6月10日 14時0分
そして、一般的には、上司と言われる方々はこの傾向が強くなります。ただ、誰にでもではなく、「部下」という存在に対しては話し続けるのです。それは上司が無意識のうちに、部下という存在を使って自分が承認される権利を手にした、と勘違いするケースが多いからではないでしょうか。
日本の組織の場合、年齢が高い人が基本的に話す権利を持つことが多いようです。それまで上司から話し続けられてきた分、自分が上司になれば「今度は自分の番」となる。これが、あまりにも日本の組織、関係性の中では繰り返されているように思います。
だから、後輩は自分の話を聞いてもらう機会を奪われ、どこかつねに“殴られて”いるような気持ちになるわけです。
「あなたはモノローグ主義者ではないですか」と上司に言っても、「そんなことはない」と否定する方が多いでしょう。なぜなら、彼らは自分よりも役職の高い人の話は聞いているわけですから。
しかし、自分自身もどこか耐え忍びながら上司の話を聞いている分、その反動は、見事に自分の部下に対して向けられる傾向にあります。
つまり部下の立場にあるときは、上司に話を聞いてもらえない。上司の立場になったら、部下の話を聞かず自分の話ばかりをしてしまう。けれどこのときの部下は、耐え忍んで話を聞いている。そのため自分の話は「聞いてもらえない」空気感はなんとなく伝わっている……。
そう考えていくと、極端に言ってしまうと、「誰も聞かれていない」ということになるわけです。どこかみんな存在承認不足。
リサーチが示す日本の「エンゲージメントの低さ」、つまり従業員のやる気やモチベーションが低い状態(ギャロップの調査によると、日本は125カ国中、最低の5%)は、こういうところに大きな原因があるのではないかと思います。
この悪循環を断ち切るには、まず、あなたが部下や後輩の話を、本当に聞いてみることから始めてみるのはどうでしょうか。
30分間、相手の話をひたすら聞く
ぜひチャレンジしてほしいのは、30分相手に話をしてもらうことです。1対1の面談で、相手にとにかく話してもらう。
30分というのは、簡単ではありません。こちらから問いかける場面もあるでしょうし、途中で相手の発信に対する承認も入れる必要があるでしょう。
そのような工夫をしつつも、30分間、自分は極力話さない、というのをやってみてください。
もしそれができれば、部下は承認されたと感じ、気持ちが満ち足りていくでしょう。組織の全員に「自分の話は聞いてもらえている」という気持ちが増せば、エネルギーは高まり、やる気が上がり、生産性やクリエイティビティの向上につながると思います。
鈴木 義幸:コーチ・エィ代表取締役 社長執行役員
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