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映画「ある一生」が描く平凡な男の"80年の人生" 世界的なベストセラーの映画化に至った背景

東洋経済オンライン / 2024年6月10日 13時0分

『ある一生』は7月12日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開©2023 EPO Film Wien/ TOBIS Filmproduktion München(東洋経済オンライン読者向けプレミアム試写会への応募はこちら)

1900年代のオーストリア・アルプスに、アンドレアス・エッガーという名の、ひとりの平凡な男がいた。

【写真】映画『ある一生』のシーン

その80年におよぶ人生を振り返ると、虐待や搾取、貧困、戦争、山の事故など、数々の厳しい局面があった。そして多くの人たちとの出会いと別れがあった。だがそれでも彼はこう感じていた。自分の人生はだいたいにおいて、そう悪くもなかったと――。

世界的ベストセラーを映画化

これまで160万部以上を売り上げ、イギリスの権威ある文学賞であるブッカー賞にもノミネートされた世界的ベストセラー小説の映画化作品『ある一生』が7月12日より新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開となる。

“世紀の小説”“小さな文学の奇跡”などと評された作家ローベルト・ゼーターラーの原作を、美しい自然の情景とともに映像化している。

本作の物語は、母を亡くし孤児となった少年時代のエッガーが、遠い親戚である農場主クランツシュトッカーに引き取られるところからはじまる。

だが農場主は、エッガーを安価な労働力としか考えていなかった。彼がミスをするたびに激しく折檻を行うなど、暴力で彼を支配し続けた。

そんなエッガーの唯一の理解者であり、心のよりどころとなったのが農場で一緒に暮らす老婆のアーンル(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)だった。彼女は諭すように少年に話す。「すぐよくなるわ。(人生と同じように)そういうものよ」と。

それから時は過ぎ、エッガーはひとりで農作業ができるほどにたくましく強い青年へと成長を遂げていた。

農場を出たエッガーは、雪山の山小屋の中で、瀕死の状態で横たわるヤギハネスと呼ばれる羊飼いと出会う。エッガーは男を背中に背負って、谷まで降ろすことにする。その道中で男は語る。「死ぬのは別に最悪なことではない」「死というのは氷の女だ」と。

ヤギハネスと別れた後、宿屋のバーに入ったエッガーはウェイトレスのマリー(ユリア・フランツ・リヒター)と運命的な出会いを果たす。

彼女の手がエッガーの腕に軽く触れた瞬間、彼は心臓に近いところに繊細な痛みを感じた。その繊細な痛みは、自分がそれまでの人生の中で受けたどんな痛みよりも深いものだった。愛というものを知った、その一瞬の記憶が、彼のその後の人生に大きな影響をもたらした。

それまで女性とは縁遠い人生を送っていたエッガーは、マリーへの接し方がわからなかった。

だが不器用ながらも、少しずつマリーとの距離を近づけていった。マリーを守りたい、彼女にふさわしい男になりたい。日雇い労働者だった彼はマリーとの結婚を決意、安定した仕事を請け負い、自分を変えようと努力する。

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