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JR東海は否定せず、新幹線「静岡空港駅」の可能性 鈴木新知事、リニア「県にメリットを」発言受け

東洋経済オンライン / 2024年6月10日 6時30分

代わりに前知事が要望したのは富士山静岡空港の近くに東海道新幹線の新駅を設置することだ。リニアの駅ができないなら、代わりに東海道新幹線の駅を造ってほしい。東海道新幹線は空港の地下を走っている。新駅が設置されれば空港と新幹線がダイレクトに結ばれ、首都圏や中京圏と短時間でアクセスできるようになる。

JR東海が新駅の位置は隣駅に近い、地形上も厳しいといった理由から否定的な見解を示すと、川勝前知事は新駅に代わる別のメリットを要求した。「静岡には駅を造らないのだから、各県の駅建設費の平均くらいの費用が必要だ」。リニア中間駅の建設費用は800億円程度と推計されているが、さすがに金銭の話を持ち出すのは露骨すぎると考えたのか、後になってメリットの話は撤回し、水資源や生物生態系に論点を絞っている。

これに対して、JR東海はリニア開業後の東海道新幹線はダイヤに余裕ができ、静岡県内の停車本数を増やせることが利便性の拡大になることが静岡県へのメリットだと考えていた。国土交通省はその経済効果は10年間で1679億円と試算している。前知事は「新幹線の停車本数増は歓迎する」としたものの、着工反対の姿勢は変えなかった。

今回の会談で驚いたのは、鈴木知事が、「大井川水資源や生物多様性に関する28項目への真摯な対応をお願いするとともに静岡の経済的なメリットもご回答いただきたい」と述べたことだ。

しかも、空港新駅についても言及した。鈴木知事は「長期的なテーマとしてお話ししただけ。具体的にお話しできる段階ではない。流域市町の方とも話をしないといけないし、可能性としてどうかということ」と、積極的に要望したわけではないことをうかがわせた。しかし、さらに驚いたのは、丹羽社長が「新駅の設置は課題がいろいろあるが、お話を受け止めて対話をしましょうと申し上げた」と明かしたことだ。頭から否定せず、協議することを約束したのだ。

「メリット」議論でリニア着工なるか

新駅設置に際しては地形上の制約といった技術的な検討もさることながら、収支面の検討も不可欠だ。富士山静岡空港の年間搭乗者数はコロナ禍前の2018年度で71万人。1日あたりに直すと2000人弱。これが今後どのように増減するかもさることながら、そもそも搭乗者のうちどれくらいの割合が東海道新幹線を利用するか。在来線のJR金谷駅とはバスで13分で結ばれているのでそちらのほうが割安でいいという人もいるだろうし、海外からきた団体客も貸切バスを利用するだろう。一方で、川勝前知事は空港駅の利用促進策として、県庁の一部機能を空港近くの施設に移転する案も披露していた。

経済的なメリットは空港新駅だけとは限らない。ロイヤルエクスプレス運行を契機とした観光政策が功を奏し、静岡県により多くの観光客が訪れるようになれば、駅近くに大きなホテルが必要になる。そこでJR東海の出番となるかもしれない。

水資源や生物多様性だけでなく静岡県の経済的メリットについても十分な議論を行い、県・地域住民とJR東海の双方が納得する結論を得て、静岡工区の早期着工につなげてほしい。

大坂 直樹:東洋経済 記者

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