米ファンド強気、金利高でも国内不動産は「買い」 ブラックストーン橘田代表「日本は米国と違う」
東洋経済オンライン / 2024年6月11日 7時30分
不動産にとって金利上昇は逆風だ。アメリカでは急速な利上げで銀行の融資姿勢が厳格化し、借り入れ金利も急騰。不動産価格は大きく下落した。日本でも3月にマイナス金利が解除され、市場は年内の追加利上げの観測を強めている。だが、「日本はアメリカとは異なる」と、不動産ファンドは強気の姿勢を崩さない。不動産市況の見通しについて、ブラックストーン・グループ不動産部門日本代表の橘田大輔氏に聞いた。
日本の銀行は融資に前向き
――日本では年内の追加利上げの観測が強まっています。国内の不動産市場への影響は。
金利が上がっても日本の不動産は「影響なし」と語るブラックストーン・グループ不動産部門日本代表の橘田大輔氏
国内金利は上がったとはいえ、足元の短期金利は20ベーシスポイント(0.2%)程度。影響はゼロではないが、それ以上にキャッシュフローが伸びている。仮に金利が1.5%まで上昇したとしても、キャップレートが3%ならスプレッドはまだ取れる。流動性に影響はないだろう。
日本の銀行も不動産向け融資に積極的だ。本来であれば、金利に先高観がある時は、それを織り込んだ融資条件になるはず。それが現状では変わっていない。来年に竣工する物件についても、足元の金利水準で融資のコミットメントを得ている。インフレによる賃料の上昇を織り込んでいるからか、アメリカのような貸し渋りは起きていない。
唯一、銀行が慎重なのは、長期契約のマスターリースだろう。10年や15年間賃料が変わらなければ、(借入金利が上昇した場合に)イールドギャップが潰れていく。とはいえ、そうした物件は一部だ。
――資産バブルの懸念はないのでしょうか。
リーマンショックと異なるのは、ファンドが借り入れによるレバレッジを抑えていることだ。当時は物件価格の8割以上を借り入れで賄うファンドが目立ったが、今は7~8割でもそういない。長期保有目的のファンドも増えており、彼らの借入比率は5~6割。われわれも、借りようと思えばもっと借りられるが一定水準に抑えている。レバレッジが低ければリターンも減るが、その分は物件の価値を向上させてキャッシュフローを改善させる。
懸念材料があるとすれば、私募ファンドや私募REITの乱立だ。あちこちで組成された結果、投資家の資金が枯渇しつつある。資金が集められなければ、彼らへの売却を念頭に物件を保有していたファンドやリース会社が処分に困る。物件の目詰まりが起きれば、流動性に悪影響が及ぶかもしれない。
ホテルは価格帯で明暗
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