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「さらば堅実経営」パワー半導体ロームの乾坤一擲 2025年の世界シェア首位を目指して怒濤の投資

東洋経済オンライン / 2024年6月11日 7時0分

そのため2023年末には、宮崎県国富町にある工場を追加で取得。40万平方メートルという巨大なこの工場はもともと、出光興産の子会社が太陽電池を生産していたものだ。さらに源流をたどると、日立プラズマディスプレイ(日立製作所と富士通、ソニーが出資)のプラズマテレビ向けのパネル工場だった。

福岡・筑後工場は技術開発のためのパイロットラインとし、国富町の宮崎第2工場を量産工場として位置づけた。これにより2030年度には、2021年度比で35倍ものSiCパワー半導体の生産能力を確保する見通しだ。

SiCへの投資が全社の収益を圧迫

だが直近の業績を見ると、こうした投資と収益のバランスが取れているとは言いがたい。

多額の投資を短期間に進めてきたために、SiCの量産投資が本格化する2024年度は、工場の減価償却費をはじめとした固定費が368億円増える見通し。2023年度の営業利益が433億円だった同社にとってはかなりの負担となる。

加えて、家電や産業機械向けの半導体市況も低迷。2024年度の営業利益は前期比7割弱減の140億円と大幅減益となる計画を立てている。過去10年で最低の利益水準に落ち込む見通しだ。

足元ではEV市場の成長鈍化が鮮明化しており、SiCの成長ペースにも影を落とす。だが、それでもロームは2025年を予定していた宮崎工場でのSiCウェハー量産時期を2024年内へ前倒しする方針を表明。「競合とは会社や設備規模でスタート位置が違っても狙うゴールは同じ。ロームのほうが速く走る必要がある」(IR担当者)。

実際に、確保している供給能力は受注に直結する。たとえば、SiCの供給能力を早くから拡充してきたアメリカの競合・ウルフスピード。同社は昨年7月、SiCパワー半導体の基板となるウェハーでルネサスエレクトロニクスと10年間の長期供給契約を行っている。

直近の業績には目もくれず、拡大路線へとひた走るローム。この先、SiC市場で覇権を握るための切り札は2つある。

東芝とEV展開の行方

1つ目は、3000億円を投じた東芝との協業・連携だ。両社は昨年12月、経済産業省から両社合計で1294億円の助成を受けることを発表した。ロームの工場では両社のSiCパワー半導体を、東芝の工場では両社の従来のシリコンパワー半導体を互いに製造し合うという内容だ。

別の国内半導体メーカー関係者の中には「互いの製品を生産し合うというのは、製造現場レベルでは実質的に同じ会社になっているようなもの」という見方もある。だが技術開発レベルで深く連携しようと思えば、単なる「協業」では限界がある。

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