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フランス「極右首相」は生まれるか、何が起きるか 危機感に賭けたマクロン大統領の勝算とリスク

東洋経済オンライン / 2024年6月12日 9時30分

今回のフランスの欧州議会選挙で大統領支持会派の選挙戦を率いたのは、全国的な知名度が低い欧州議会議員のハイヤー氏だった。国民議会選挙では、フィリップ元首相、アッタル現首相、ルメール財務相、ダルマナン内相など、人気と知名度を兼ね備えた政界の重鎮がこぞって選挙戦を展開する。

選挙制度を考えると、大統領支持会派が決選投票に進んで勝利するには、極右勢力だけでなく、左派勢力の動向も鍵を握る。

2022年の国民議会選挙では、社会党、不服従のフランス、欧州・エコロジー=緑の党、共産党などが統一会派・新人民連合環境社会(NUPES)を結成し、最大野党となった。社会党はその後の議会運営で左派統一会派NUPESに参加せず、今回の欧州議会選挙で他の左派政党を上回る支持を獲得し、党勢回復に成功した。

欧州議会選挙で別々に戦った左派政党が、国民議会選挙で再び統一会派を結成できるかはわからない。その場合、野党票が分断し、大統領支持会派に有利に働く可能性がある。

ただ、欧州議会選挙での大敗直後に行われる今回の国民議会選挙で、大統領支持会派の苦戦は避けられない。国民連合の支持者は引退した高齢者や過激思想の持ち主だけでなく、若者や一般市民に広がっており、かつてのような「危機バネ」が働くとは限らない。

極右政党が第一党となれば、極右首相が誕生する可能性が高い。

大統領と議会のねじれ回避策も効かず

フランスでは大統領が首相を任命する。首相選出に関する明示的なルールはなく、非議員の首相を任命することもできるが、内閣不信任を回避するためには議会の多数派が支持する首相を任命する必要がある。

第五共和制下(1958年以降)のフランスでは、大統領の出身政党と議会の多数派が食い違うこと(コアビタシオン)が何度か発生し、政権運営を難しくしてきた。こうした事態を回避するため、2000年の国民投票で大統領任期を従来の7年から5年に短縮し、大統領選挙の直後に国民議会選挙を行うように改められた。その後は大統領の与党が直後の議会選挙で敗北したことはなく、コアビタシオンが発生していない。

極右首相が誕生した場合の政権運営の行方は未知数だ。過去のコアビタシオンでも、大統領と議会第一党の主張や政策軸がここまで異なったことはない。

フランスでは国家元首である大統領が政治の中心で、大きな権限を持つが、大統領が主に外交と国防を、首相が閣僚とともに内政全般を担う。大統領は首相・閣僚の任命権や議会の解散権などを通じて、首相に圧力を掛けることができるが、議会が決めた法案の拒否権を持たない。

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