「アップルのAI戦略」が競合とあまりに違う事情 ChatGPTと"連携"したアップルらしい理由
東洋経済オンライン / 2024年6月13日 7時0分
Apple Intelligenceは、このように利用者の家族構成や交友関係、予定や現在地などかなりプライベートな情報を把握しているからこそ、よりユーザーに有益なアシストが可能になっている。それを行ううえで重要になってくるのがプライバシーへの配慮であり、アップルが、他社に対して大きなアドバンテージを持つ領域でもある。
ITの世界において利便性向上とプライバシー保護は常に相容れない関係にあった。上記のようなアシストに必要な個人情報が、悪意を持つ人の手に渡ると悪用される恐れもある。
アップルはこれまで何年もかけてiPhone、iPad、Macといったアップル製品上で管理されている個人情報はいっさい外に漏れることがなく、同社でさえのぞくことができない設計であることを訴え続け、信頼を獲得してきた(昔、FBIがテロリストから押収したiPhoneのロックを解除することをアップルに要求したが拒まれたということもあった。現在のアップル製品は、そもそもアップル自身もロックを解除できない)。
実はこれはアップル以外の広告を主な収益源とするIT企業には、なかなか取りづらい戦略である。というのも、広告を収益源とするIT企業の多くが、ユーザーの個人情報に基づいて、より効果がある広告を表示させることで利益を得てきたからだ。
一時は行きすぎた個人情報獲得合戦を反省して、他社もプライバシーへの配慮を謳いはじめてはいるが、広告収入に頼っている以上、アップルより厳しいプライバシー保護は期待しにくい。
Apple Intelligenceの一番の売り
アップルはIT業界では希少になった製品の売り上げを生業にした伝統的製造業だからこそ、個人情報に頼らないビジネスが可能で、このアドバンテージを最大限活かすべく「プライバシー保護」を声高に訴えている。
ハードウェアやOSを作る際にも、「使用するデータを最小限に留める」「(通信を行わず)機器上で処理する」「機器上で何が行われているかについて透明性を保ち、ユーザーにプライバシー情報の管理権限を渡す」「しっかりとしたセキュリティー技術でプライバシー情報を守る」という4つのプライバシー保護に関するデザイン原則を設けて設計しているため、基本的にアップル製品に預けた個人情報は、ユーザー以外には漏れることがなく、アップルもこれを見ることができないという認知が広まっている。
Apple Intelligenceはこの信頼できるプライバシー設計の上に立脚したAI機能であることが実は一番の売りになっている。
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