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「すぐ疲れる」「だるい」と不調な人の意外な盲点 自分でもできる「慢性疲労」を解消する方法

東洋経済オンライン / 2024年6月14日 17時0分

その中で、私がこれまで多くの患者さんの診療を通して、コロナ後遺症の中心的役割を果たしていると実感するのが、ウイルス感染によって引き起こされる「迷走神経の炎症」です。実際、コロナ後遺症の患者さんでは頸部の迷走神経が炎症のために肥厚していることがエコー検査で確認されています(文献2)。

迷走神経は自律神経のうち副交感神経の約8割を占める、全身に分布する重要な神経です。迷走神経が炎症を起こすと副交感神経と交感神経とのバランスが崩れてしまい、体にさまざまな異常をきたします。

迷走神経は副交感神経として呼吸、心拍、消化管運動などにかかわっているため、迷走神経が炎症を起こすと、呼吸困難、動悸、胃もたれ、下痢、便秘、腹痛などの症状が現れます。

また、延髄の孤束核(こそくかく)に向かう迷走神経(求心性迷走神経)が炎症を起こすと、延髄からさらに大脳の視床下部や大脳辺縁系にまで炎症が広がり(「脳の炎症」です)、その結果としてめまいなどの自律神経系の障害や頭痛、倦怠感、疲労感、集中力の低下、記憶力の低下などの身体症状を引き起こします。

「慢性疲労」のおおもとは?

では、迷走神経の炎症が始まる、つまり「火種」がつくられている体の場所はどこでしょうか?

①コロナ感染で炎症が生じる場所

②迷走神経が分布している場所

この2つを満たすことが条件です。そして、その場所こそが「上咽頭」です。鼻の奥で両側の鼻腔から入った空気が合流し、肺に向かって下方に方向を変える上咽頭は細い毛が生えた繊毛上皮で覆われており、ウイルス、細菌、粉塵などが付着しやすい場所です。

上咽頭で生じた火種が迷走神経という導火線を伝わり、延髄や大脳に到達して「脳の炎症」を引き起こしてしまうわけです。

迷走神経の炎症を治すといっても、神経の炎症であるため一般的な抗炎症薬が効くわけではありません。迷走神経の炎症を抑える方法として海外で注目を浴びているものにVNS(Vagus Nerve Stimulation)と呼ばれる「迷走神経刺激療法」があります。

そして、この迷走神経を刺激する簡単で安価な治療法、それが「上咽頭擦過療法」(EAT:Epipharyngeal Abrasive Therapy)です。EATとは迷走神経が豊富に分布している上咽頭を薬液(通常は0.5%から1%濃度の塩化亜鉛溶液)を浸した綿棒で擦過する治療法です。

この方法は1960年代に東京医科歯科大学の初代耳鼻咽喉科教授である堀口申作氏によって始められた日本オリジナルの治療法で、耳鼻咽喉科医の間で一時期脚光を浴びました。しかし、残念なことに、①治療に伴う痛み、②低い診療報酬などの理由で、実施する医師が1980年代以降、ほとんどいなくなってしまいました。ですが10年ほど前から、腎臓病の1つであるIgA腎症などとの関連でこの治療の価値が見直され、最近になり再び注目を集めつつあります。

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