もし、SNSが「ある/ない」時代に学生期を送ったら Z世代と非Z世代とでつくられた「Z社会」の構造
東洋経済オンライン / 2024年6月14日 10時0分
その一方で、世界が見えすぎてしまうことによって、閉じていたからこそ保たれていたものが失われることもあるでしょう。この学校ではイチバン詳しいという自負があったけれども、ソーシャルメディアを介することによって、もっともっとすごい人を目の当たりにしてしまい自信を喪失するようなものです。
ソーシャルメディアの光と影の側面を簡単に示してみました。ほかにもソーシャルメディアを介して何ができるようになったのかを挙げていくと、それだけで一晩語り合えるほどの愛憎半ばするものがあるでしょう。
ローカルな振る舞いがグローバルに見つかってしまう
ここで大事なことは、「ソーシャルメディアが学生期にあったのかどうか」です。
学生というものは、多くの時間がありながら、基本的にはローカルに閉じられた存在です。資金的な制約や人間関係的な制約によって、基本的には学校や大学を中心としたローカルの世界がすべてです。しかし、ローカルの世界がすべてであったはずが、ローカルとソーシャルメディアとが接合されているのが「いま」なのです。
現実世界のローカル性というものは、思っているよりも無自覚なものです。そこで生まれ育ち、当たり前に過ごしてきたからです。現実世界でローカルに生きていると、グローバルに開かれているということを意識する機会は滅多にありません。
良い振る舞いや悪い振る舞いがあったとしても、それはローカルに流れる情報として完結します。現実世界では「開かれたネットワーク」であることを意識することはほとんどないのです。
ところが、ソーシャルメディアでは同じようにはいきません。現実世界と同じように立ち振る舞っているときに、それが良くも悪くも誰かに見つかってしまう。ソーシャルメディアは世界に開かれているからです。ローカルへのアクセスというものが、ほぼコストゼロで達成されてしまいます。
その結果として、誰かに見つかり「炎上」してしまう。ローカルでは許されていた仲間内のノリが、ソーシャルメディアを介して見つかってしまうのです。われわれはこのような事例が何度も繰り返されてきたことを知っているはずです。インターネットによって良くも悪くも世界が見えるようになってしまったのです。
ソーシャルメディアが「ある/ない」学生期
インフルエンサーについても同じです。世界に開かれて世界とつながってしまった。インフルエンサーのようなものは、インターネット以前からありました。たとえば、ファンクラブに入会して、毎月会報が郵送されてくるようなこともあったでしょう。このとき、いわゆるアンチには見つかりにくいローカルな世界が構築されています。閉じたコミュニティで楽しくやっていたのが、ソーシャルメディアを介してコミュニケーションの場が開かれてしまうことによって、誰かに見つかる可能性が高まりました。それは新たなファンが見つかることでもあり、思いもしないアンチに見つかることにもつながるわけです。
この記事に関連するニュース
-
「ソクラテスの毒杯」から西洋哲学が始まった理由 グローバリズム批判は「高貴ないきがり」である
東洋経済オンライン / 2024年7月1日 11時0分
-
「マウントを取る道具」として広まる歪な論文信仰 専門家は「思考と責任」の便利な外注先ではない
東洋経済オンライン / 2024年6月28日 11時30分
-
Z世代が囚われる「第三者目線」という強迫観念 メリットなき個人行動の「コンプライアンス化」
東洋経済オンライン / 2024年6月27日 11時0分
-
なぜ大人は若者に「合わせる」ようになったのか 成熟という価値観を喪ったデオドラント化社会
東洋経済オンライン / 2024年6月26日 11時0分
-
専門家が「専門外」についても語る社会は健全か 「数値を出さなきゃ意味がない」が逃す利得
東洋経済オンライン / 2024年6月11日 13時0分
ランキング
-
1バナナ・パイン・マンゴーが… 軒並み値上がりの“ワケ” 試す人が増えている国産バナナとは…!【Nスタ解説】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月3日 21時19分
-
2ローソン、7月24日上場廃止 KDDIとポイント経済圏の拡大などを目指す
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年7月3日 17時46分
-
3NHKが34年ぶりの「赤字」でも止まらない肥大化 総資産の6割超を現預金と有価証券が占めている
東洋経済オンライン / 2024年7月4日 8時0分
-
420年ぶり“世代交代”新紙幣に行列も… 「Aの1番」の行方は…深谷市長が日銀へ
日テレNEWS NNN / 2024年7月3日 22時0分
-
5LCCピーチの「運賃プラン」刷新へ! これまでより良くなる?それとも… 「より分かりやすく」がテーマ
乗りものニュース / 2024年7月3日 18時22分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください