テスラの"車両分解"で見えた設計の奇想天外 岐阜の廃屋舎が「EVに関する情報発信の聖地」に
東洋経済オンライン / 2024年6月14日 7時20分
「モデルY 2020」に搭載されて話題になった「オクトバルブ」も置かれていた。8つの穴を持つバルブユニットだ。
一般に空調やパワートレイン、電池パックはそれぞれ独立した冷却回路を持つが、オクトバルブの発明で冷却水が流れる経路を変えながら、車両全体で熱を管理することができるようになった。
部品が減り、軽量化、コストダウンが可能になる。結果的に航続距離の延長にもつながる。マスク氏自身も絶賛したという部品だが、「オクト」を意味するタコの図柄もあしらえる。「こうした遊び心に彼らの余裕を感じる」と光部部長はため息をつく。
「宏光MINI」は徹底的なコスト削減
展示された部品一つひとつを見比べていくと、各メーカーの思想の違いが見て取れる。
バッテリーから供給される直流電力を交流電力へ変換する装置のインバーターは熱を発する。テスラでは半導体を冷やすための冷却フィン(突起物)を立てて表面積を大きくし、冷却機能を高めている。
一方、上汽通用五菱汽車(中国)の格安小型EV「宏光MINI」では、空冷方式を採用している。「パソコンのような部品で、これで本当に冷えるのか。おそらくリスクもあると思うが、コストダウンを優先している。こうした発想は日本のメーカーにはない」(光部部長)。
シートの構造を見ても、宏光MINIはかなり簡素化しており、使う部品も徹底的に減らしてコスト削減に挑んでいる。こうした設計思想の違いは、データだけからでは実感として伝わらず、分解して始めてわかるものだ。
三洋貿易は2016年にアメリカのエンジニアリング会社、ケアソフト社の日本総代理店となった。販売しているのはケアソフト社の自動車ベンチマークサービスだ。EVをはじめとした最新車両を分解・解析し、得られた情報をデータベース化してベンチマークデータとして提供している。
自動車関連メーカーは当然、自ら競合商品を分解して研究を深めている。だが、EV化の流れが加速する中では、新興メーカーが次々に立ち上がり、新しい技術や製品が現れては消えていく。
光部部長は、「これだけプレーヤーが多くなってくると、メーカーは自分たちで情報を追い切れない。そこでわれわれのデータベースを活用して競合品の調査ができる」と話す。
展示場には9万点以上の部品が並ぶ
世界中のEV160台分の部品データを集め、高精度の3Dモデルで可視化するケアソフト社のサービスは世界中で200社ほどが利用する。国内でも約40社が利用し、その利用者向けに現物を展示するのが、瑞浪展示場というわけだ。
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