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「ガンダム」生みの親が語る日本エンタメ史の裏側 安彦良和氏が驚愕した才能、原作のアニメ化に思うこと

東洋経済オンライン / 2024年6月15日 11時0分

そう感じていたとき、見えたのが漫画を描くという道だった。大勢の人がかかわり、大きなお金が動くアニメと異なり、漫画の場合は個人的な作業だから、自由度が高くて描きたいものが描ける。連載してみて人気が出なければ「ごめんなさい」でやめればいい。そう思って、1990年代から専業漫画家になった。実際に歩みだして「本来の俺の夢は漫画家だったんだ」と思い出した。

漫画の仕事はしっくりきたが、アニメでなまじ成功していた分、敗北感はあった。

歴史を史実に縛られず、自由に描く

――漫画作品では、歴史モノを多く手がけていきます。

ちょうど「最後のアニメ作品」の仕事が終わる頃に、描き下ろしで『古事記』をテーマに漫画を描かないか、とお世話になっていた編集者から提案があった。「好きなように描いていいですか」と聞くと、「いいよ」と言うので、『古事記』の解説ではなく、その素材を自分なりに解釈して描いた。

解釈するといっても、僕は研究者ではなく漫画家だ。史実に縛られず、自由に描ける。たとえば、日本にまだ騎馬の習慣がない時代を描いていても、見栄えが良くなるから(登場人物を)すぐ馬に乗せてしまう。ちょっと軽薄だな、という認識はあるが、漫画はビジュアルが第一なのだから、仕方がない。資料が豊富に残っている時代だとさすがにそれを無視することはできないから、「歴史以前」の時代は、むしろ描きやすかった。

――作品には、魅惑的な女性キャラクターが多々登場します。

女性を描くのははっきり言って苦手だ。女性の気持ちはなかなかわからないから、男性から見た女性として、勝手に理想化してしまうきらいがある。

今のフェミニズムは、女性という性を超越しようというふうに見えて、ちょっと苦手だ。好きなのは、もっと原始的(プリミティブ)なフェミニズム。

『魏志倭人伝』には、男性の王ではクニがよくまとまらないときに、女子を擁立したらまとまったと記されている。もっと遡れば、『はじめ人間ギャートルズ』に描かれているように、狩りに行った男性が空手で帰ってきたら、貫禄のあるお母さんが「甲斐性なし!」と叱るような、家でどっしりと構えている女性たちの姿があったのではないか。

これが要するに、「原始、女性は実に太陽であった」ということだ。男性との役割分業があったとしても、それは差別ではなく、女性が大きな存在感を示していたのだと思う。現代の「女性活躍」は女性が男性と同じように社会で働くことを重視する。もちろん、能力がある女性はどんどん社長にでも、総理大臣にでも、なっていくべきだ。ただ、それだけが女性の活躍とは限らないだろう。

25年ぶりに「ガンダム」のアニメ化で総監督に

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