今こそ日本とイギリスが関係強化すべき3つの理由 「トランプ2.0」に備え、インド・太平洋地域にも重要
東洋経済オンライン / 2024年6月15日 9時0分
インド太平洋地域は、世界経済の牽引役を担っているが、一方、台湾問題や東シナ海、南シナ海で中国が強硬な海洋進出を行っている問題、北朝鮮問題などがあり、地政学的には極めて不安定な地域である。
歴史からみたインド太平洋は重要
実はイギリスにとっても、インド太平洋は極めて重要な地域である。17世紀までは、オランダが海洋貿易を支配していたが、18世紀に入るとイギリスが取って代わる。
フランスとの七年戦争(アメリカ大陸ではフレンチ=インディアン戦争、1756~1763年)での勝利、ベンガル州・フランス連合軍とのプラッシーの戦い(1757年)での勝利により、イギリスはアメリカ大陸やインドでの権益を大きく拡大した。
また、ロンドンの金融機能による強い財政基盤が貿易と戦争を支え、18世紀には海洋貿易の覇権は、オランダからイギリスに移った。
1770年代には、新大陸(南北アメリカ)とアジアとの貿易額が、ヨーロッパ諸国との貿易額を上回り、過半を占め、欧州からの離脱はこのときにも起きている。すなわち、当時のイギリスにとって、インド太平洋地域は経済の生命線であったということだ。
その後、インドから中国、当時の清にアヘンを輸出し、中国から紅茶を輸入するという三角貿易で巨額の利益を上げた。これが清とのアヘン戦争(1840~1842年)へ発展し、そして香港の英植民地化へと繋がっていったことは、よく知られている。
そして2024年、イギリスは再びインド太平洋に帰ってくる。CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)への加盟だ。
イギリスは、2016年の国民投票でEUから離脱を決めた。当時ジョンソン首相は、「グローバル・ブリテン」を目指すと宣言している。
それに伴い、イギリス外務省が外交方針を策定し、インド太平洋地域に重点を置くことが明記された。イギリスは2021年にCPTPPへの加盟を申請。2024年後半にも各国の批准を終えて正式加盟となる。
コモンウェルスの存在
やはり、イギリスは海洋国家としての道を選んだということだ。イギリスは「コモンウェルス」(いわゆる「イギリス連邦」)と称するオーストラリアやインドなど旧イギリス領の国家が加盟する国家連合を持つ。
インド太平洋回帰は、これらとの関係強化を図る意図もある。いずれにせよ、この地域を最重視することは、日本と共有している。
2つ目の理由は、日本が、近代において「世界」や「民主主義」というものをイギリスから学び続けてきたという歴史にある。イギリスが日本に大きく影響を与えたのは、幕末から明治にかけての維新期である。
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