今こそ日本とイギリスが関係強化すべき3つの理由 「トランプ2.0」に備え、インド・太平洋地域にも重要
東洋経済オンライン / 2024年6月15日 9時0分
とくに、幕末の長州藩とイギリスとの関係は明治期に大きな影響を与えた。「長州ファイブ」として知られている伊藤博文や井上馨など幕末の長州藩イギリス留学組は、明治の国家体制を作るのにイギリスを参考にした。
伊藤は、岩倉具視を全権大使とする岩倉使節団の副使として、欧米を訪問したときもイギリスに滞在、また、大日本国憲法を作るための調査隊として欧州を歴訪(1882~1883年)したときもイギリスに長く滞在し、イギリスの国家体制をつぶさに研究している。
伊藤は、当初はドイツモデル、そして中長期的にはイギリス型の立憲君主制を目指したのであろうと思える。ところが、伊藤は、志半ばで中国東北部・ハルビンにて暗殺された。
その後、本格的に日本にイギリス型立憲君主制が導入されたのは、第2次世界大戦後のGHQ(連合軍総司令部)が中心になり制定した日本国憲法である。すなわち、天皇を象徴としイギリス流の「王は君臨すれども統治せず」が受け継がれた。
このように、近代の日本は、イギリスをモデルとして、技術や国家体制、民主主義の在り方など多くをイギリスから学んできたと言える。
インテリジェンスを日本は学ぶべき
そして今日、イギリスから学ぶべきことは世界を見る目、すなわち国際情勢分析力だ。歴史に「もし」という言葉はないが、日露戦争を勝利に導いた「日英同盟」が、もし続いていたら、日本が太平洋戦争の道を進むということはなかったであろう。
国家としてのインテリジェンス(情勢分析力)だけでなく、国民レベルでのインテリジェンスと判断能力が、戦前の日本においては明らかに欠けていた。民主主義国家としては、国民のインテリジェンスが国家の運命を決める。
3つ目の理由は、両国の「現代の国際社会における類似したポジション」である。どちらもG7国であり、またアメリカとの同盟国である。ストックホルム国際平和研究所によれば、防衛費ではイギリスは世界第6位、日本は10位とミドルパワーとしての防衛力を持つ。
しかし、日本が予定の防衛費を増額すれば3位に浮上するという試算もある(これは、各国の軍事費が現状のままであればという前提での試算なので、現実的ではない)。いずれにせよ、日本とイギリスが共同すれば、インド太平洋の安定性は大きく増す。
実は、両国の防衛面での協働はすでに始まっており、その代表例は、次期戦闘機の共同開発だ。イタリアを加えた3カ国で開発を行い、2035年に初号機を配備するという計画である。日本にとってアメリカ以外との共同開発は初めてのケースとなる。
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