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心臓外科医が説く「手術に向き合う」心の整え方 「ゾーンに入る」ことを期待してはいけない

東洋経済オンライン / 2024年6月16日 19時0分

多くの方が、後者に仕事を任せると思います。なぜなら、仕事を任せるときは「期待どおりの働き」を相手に求めているからです。はじめから「期待以上の働き」を求めている人はいないでしょう。

大事なのは「いつもと違う力を発揮する」ことよりも、「いつもと同じ力をどんなときでも発揮できるようになる」ことです。「メンタルフラット」を強く意識してください。

見失った自分を取り戻す「戻るべき場所」

生きていればさまざまな影響を受けて、自分は何をしたかったのか、見失いそうになるときがあります。私も、何度も何度も経験してきました。

1958年10月10日に東京で生まれた私は、少々腕白ながら平凡な少年でした。ただ、工作や細かな作業が得意で、手先は器用でした。これは父親から受け継いだものだったと思っています。

麻布中学校に進学。その中学3年生時に、運命的出会いがありました。

それは、漫画『ブラック・ジャック』との出会いです。それまで私は、将来のことを深く考えることなく日々を過ごしていましたが、『ブラック・ジャック』を読み、大きな衝撃が走りました。

みなさんご存じのとおり、この漫画の主人公ブラック・ジャックは、組織に属さない孤高の天才外科医。高い医療技術を持つ彼が、さまざまな人の命を救っていく物語です。1970年代に『週刊少年チャンピオン』で連載されていました。

ブラック・ジャックは高額な手術費を要求するのですが、それには理由が隠されています。心の底に、熱いヒューマニズムを秘めている。

周囲の雰囲気に流されることなく、自らの腕ひとつで世界を舞台に人間の生命と向き合うブラック・ジャックに私は憧れました。そして、麻布高校に進む前に決意したのです。

「ブラック・ジャックのような外科医になりたい」と。

私は手先が器用だと感じていましたから、心臓外科医を目指そうとも思いました。

中学生のころ、私はそれほど漫画が好きだったわけではありませんでした。そんな私が偶然にも『ブラック・ジャック』に出会えたことには、運命的なものを感じます。

手塚先生が描くブラック・ジャックは、単に技術に優れた天才医師にとどまりません。人間の生死に真摯に向き合い、「生きるとは何か」ということに思慮深く迫っていました。そのことが、中学生の私の心を強く揺さぶったのだと思います。

私にとっての「戻るべき場所」、それは『ブラック・ジャック』に出会った少年時の心のときめきです。もし日々に追われて自分を見失いそうになったら、「戻るべき場所」を意識してください。それが心を取り戻すきっかけになるはずです。

白衣を着たらやることはひとつだけ

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