池上彰「第三次世界大戦は起きない」と考える理由 人類が「2度の世界大戦」から学んだこととは
東洋経済オンライン / 2024年6月16日 18時0分
戦後79年、日本は一度も戦争の当事者国になっていない。しかし世界では、絶えることなく戦争や紛争が続いてきた。そして2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻。2023年10月には、イスラム組織ハマスとイスラエルの間で戦闘が始まった。
世界はどこに向かうのか、日本はこのまま平和でいられるのか――。
そうした疑問をジャーナリストの池上彰氏が解説する『新・世界から戦争がなくならない本当の理由』より、一部抜粋しお届けします。
第三次世界大戦は起きるか
いまウクライナとパレスチナでは戦闘が行われています。この戦火が3度目の世界大戦を呼び起こすのか──そう案じる声も聞かれます。本稿では第三次世界大戦の可能性について考えます。
そもそも「世界大戦」とは、どのような状態を指すのでしょうか。実は、明確な定義はありません。辞書を開いても、「世界規模で行われる戦争」などとされています。つまり、多数の国が敵味方に分かれて戦うこと。英語なら「ワールド・ウォー(World war)」です。
日本は第一次世界大戦(1914~1918年)に参戦しています。この戦争は連合国(協商国。イギリス、フランス、ロシア、ルーマニア、アメリカなど)と同盟国(ドイツ、オーストリア゠ハンガリー、オスマン帝国、ブルガリアなど)の戦いです。当時、日本は日英同盟を結んでいましたから、イギリスの要請で戦争に加わったのです。
1914年8月にドイツに宣戦布告、ドイツ軍が拠点としていた中華民国・山東半島の青島を攻撃しました。1917年6月には地中海のクレタ島付近で、救助作業中の日本の駆逐艦がドイツ軍のUボート(潜水艦)に魚雷攻撃を受け、59人が戦死しています。
第一次世界大戦に関わったのは、日本を除けばヨーロッパの国々です。アジアやアフリカ諸国は参戦していません。それでも、当時の「世界」という概念がヨーロッパ中心でしたから、「世界大戦」と呼ばれるわけです。これが第二次世界大戦になると、アジアまで広がりました。文字どおりの世界大戦です。
こうした考え方に基づくなら、ロシア・ウクライナ戦争は世界大戦ではありません。ところが、もしウクライナ軍にNATO軍が加わり、ロシア対NATOという構図になれば、第三次世界大戦になり得ます。なぜならNATO軍は、欧州合同軍(EU)、大西洋連合軍(アメリカ)、海峡連合軍(イギリス)、カナダ・アメリカ計画グループ(カナダ)など各国の軍隊で構成されているからです。
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