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池上彰「第三次世界大戦は起きない」と考える理由 人類が「2度の世界大戦」から学んだこととは

東洋経済オンライン / 2024年6月16日 18時0分

しかしプーチンは、ロシア対NATOの戦争は避けたい。だから核兵器の使用をほのめかして脅しているのです。NATO側も、対ロシア戦争にならない程度にブレーキをかけています。したがって、いまのままであれば、ロシア・ウクライナ戦争が第三次世界大戦に拡大することはないでしょう。

アメリカの2隻の空母が意味すること

では、イスラエルとハマスの戦いはどうでしょう。イスラエル軍の攻撃でパレスチナの人たちが犠牲になっているわけですから、アラブ諸国が同胞としてパレスチナを支援し、ハマスに加勢するのは当然でしょう。しかし、アラブ諸国は軍を派遣するような直接行動は取らず、イスラエルへの非難声明を出すに留まっています。

イランの最高指導者アリー・ハメネイ師は、2023年11月5日、X(旧・ツイッター)に「侵略者であるシオニスト(イスラエルのこと)に対するパレスチナの抵抗を支持することが、イランの永続的な政策だ」と投稿しました。ハマスの指導者イスマイル・ハニヤとテヘランで面会後のことです。かといって、イラン軍や革命防衛隊(正規軍とは別系統でハメネイ師直属の武装組織)がパレスチナに出動することはありません。

もしイランがイスラエルと全面戦争になれば、イスラエルは核保有国ですから核ミサイルをイランの首都テヘランに向けて発射するかもしれません。しかも、アメリカは間違いなくイスラエルを支援します。

イスラエルがハマスを攻撃すると、アメリカは地中海に2隻の空母(航空母艦)を展開しました(いまは引き揚げています)。この表現だと空母2隻だけと思われるかもしれませんが、実状は違います。空母を含む軍艦が20隻です。これはアメリカの空母が「空母打撃群」というチームを組んでいることによります。

空母は戦闘機や爆撃機を載せていますから攻撃能力に優れていますが、防御能力は脆弱です。そのため、周囲にミサイル巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、補給艦などを配し、大体10隻でひとつのチームを組んでいます。ということは、空母2隻=2チーム・軍艦20隻の計算になります。驚異的な攻撃能力です。

【2024年6月18日11時00分追記】初出時、記載に誤りがあり、一部訂正いたしました。

空母から戦闘機や爆撃機が発艦し、ミサイル巡洋艦が一斉に数百発のミサイルを発射すれば、核兵器を使わなくてもテヘランは壊滅します。アメリカは、その力をイランに見せつけたのです。だからイランは、イスラエルに対して非難の声を上げるけれども、自ら手を出そうとしません。地中海を遊弋する2隻の空母、この現実が戦争の抑止力になったのです。

国際航路の安全を確保するための報復攻撃

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