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「東大理系卒で金融業界」の僕らが小説を書いた訳 田内学×白川尚史「異色の受賞小説家」対談後編

東洋経済オンライン / 2024年6月17日 9時0分

その話を信じて、1冊目の本(『お金のむこうに人がいる』ダイヤモンド社)はできるかぎりわかりやすくするよう注力して書いたところ、実際に安倍さんの勉強会に呼ばれることになったんです。

田内:その際は、財政問題のほかに、少子化対策なんかのお話もしたのですが、そこでわかったのが、政治家というのは票が取れなかったらただの人だということです。

どういうことかというと、仮に「この政策が大事だ」と思っても、国民の理解がないと、政治家はその政策を優先的に進めることができないのです。

では、政策でどうにかしてもらうことを期待するのではなく、国民全体が問題意識を共有して、その問題を解決する方向に進めるにはどうしたらいいだろうか、それを考えることが大事だなと思ったのです。

だったら、わかりやすさや取っつきやすさを強調した形にして、多くの人に届けたいと思い、小説という形を選んだわけです。

「パーキンソンの凡俗法則」の示唆

白川:なるほど。その狙いがまさに大当たりして、20万部を突破したということですね。

田内:それだけが理由だとは思わないのですが、大きくなりすぎてしまった社会に、当事者意識をもってほしいというのは、今でも思っています。ですので、たくさんの人に手に取ってもらえたのは素直に良かったと感じています。

白川:この間、Wikipediaで「パーキンソンの凡俗法則」という項目を見つけました。それによると、人は大事なことではなく、些細なことについて議論をしたり、時間を取りたがる傾向があるらしいのです。

例えば、原子力発電所の立地場所より、駐輪場の場所を決める議論に積極的に参加したがる、といったことが例に挙げられています。

どう考えても発電所の場所のほうが大事なのですが、「それって、難しいし、専門家が考えることでしょ」と、自分事としてとらえない傾向があるらしいのです。

逆に自分もよく知る駐輪場ができるとなると、場所とか屋根の材質とか自転車が何台置けるとかが気になって、口を出したがる人がたくさん出てくる。

白川:つまり、人は、その議題の重要性ではなく、自分が詳しいと思えるかどうかで議論に積極的に参加するかを決め、逆によくわからないことは、専門家に任せようとなってしまう傾向があるということです。正しくない意見を言うのが嫌だったり、そのせいで恥ずかしい思いをするのを避けたりするように、意識が働くのでしょうね。

この法則が正しいとすると、「経済ってこうだよね」と経済のことを自分も知っていると思う人が増えれば増えるほど、興味を持って議論に参加する人が増えますよね。だから、田内さんの活動は社会にとってすごく価値のあることだと、お話を伺いながら感じていました。

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