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ハワイ追い抜く「沖縄」観光地モラル低下のヤバさ サンゴの踏みつけなど生態系への影響も問題に

東洋経済オンライン / 2024年6月17日 15時0分

国際的にみると、実証実験で策定された内容(利用届の提出、時間あたり利用人数や進入禁止区域の設定など)は、自然保護区では、極めて一般的な措置であるが、これすら実装することが難しい状況にある。

ハワイであれば、すぐに対策が採られるだろうが、日本では拘束力に乏しい実証実験や自主ルール、自粛要請を繰り返すことでお茶を濁すきらいがある。その間に、地域住民が迷惑し、自然が壊され、事故が起こり、観光客が遠ざかっていく……という負のスパイラルが繰り返される。

これでは観光立国どころではない。

オーバーツーリズム・スポットの多さ

沖縄県が日本の他地域と特に異なるのは、真栄田岬のようなオーバーツーリズムの問題を抱えているスポットがいくつも存在する点である。

2012年に沖縄県が行った「早急に環境保全が必要なサイト」に関するアンケート調査では、真栄田岬に加えて、慶良間諸島、ター滝、ピナイサーラの滝、辺野古沖、八重干瀬(やびじ)、宮城海岸、米原海岸などの名前があがっている。

アンケートから11年が経過しているが、これら「早急に環境保全が必要なサイト」とされた場所のうち、法に基づいた対策が予定されているのは、世界自然遺産に登録された西表島の「ピナイサーラの滝」など、ごく一部である。

それ以外の地域でも、死亡事故の多さ(真栄田岬、ター滝)や半グレ集団の資金源となっているビーチなど、現在もさまざまな課題が指摘されているが、国や県、自治体は重い腰をあげず、今も無秩序な利用が放置されている箇所が数多く存在する。

特に、真栄田岬の実証実験でも出てきたように、事業者のモラルの低さは顕著であり、環境を守りながら真っ当なエコツアーをやりたいと考えている事業者が損をする構造になっている点は大きな課題である。

レンジャーが少ないといった問題も

筆者の研究プロジェクトでは、エコツーリズムを実施している多くの事業者に聞き取り調査を実施しているが、「法令違反をしている事業者に注意をしたら逆に恫喝された」とか、「お前、裁判したいのか」と怖い顔で言われたという話を頻繁に聞く。

エコツーリズムは国立公園内で実施されていることが多いが、日本では巡視活動を行うレンジャー(自然保護官)が極めて少ないなど、本来自然を守るべき場所の利用の仕方として、多くの問題がある。

また、こうした悪質な事業者は、ガイド技術や安全面の対応が不十分であるにもかかわらず、派手なウェブサイトやフリーペーパーの広告を駆使し、安価な値段で観光客を集めることに長けている。

本来、ガイド技術や安全面の対応をしっかりやるとツアーの金額は上がらざるを得ないが、観光客はそのことがわからないのである。

沖縄県が基地関連産業から脱却して自立したいという思いから、観光産業に前のめりになってしまう状況があることは理解するが、その素晴らしい自然や文化を切り売りしてテーマパーク化してしまっては、元も子もない。

京都や富士山もさることながら、沖縄こそオーバーツーリズムの問題が根深く、深刻であると筆者は考えている。

田中 俊徳:九州大学アジア・オセアニア研究教育機構 准教授

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