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一生を宇宙船で過ごす人々が直面する問題とは? 何世代も続く「遠い恒星への旅」の倫理と哲学

東洋経済オンライン / 2024年6月18日 16時0分

海軍に倣えと言うけれど、船上で暮らす人々の文化とはどのようなものだろう?

ワールドシップが軍が主導する軍隊式規則の下で旅に出るというのは考えづらい。この旅に参加する選び抜かれた人々は、地球の人間の多様性をほぼそのまま反映したさまざまな人々で、全員がその後生涯にわたって厳格な軍紀に苦痛も感じずにしたがうような性格ではあるまい。

仮に当初の乗組員がそういう人々だったとしても、その子どもたちは? 船長の娘が次期船長になるように訓練されるのだろうか? 料理長の息子は、成人したらずっと乗組員の食事を準備する運命にあるのだろうか?

おそらく、移住者たちが採用する何らかの教育システムを修了した子ども世代の若者たちがこれらのポストを巡って競争し、その結果適任者が選ばれるのだろう。何らかの階層構造が必要になるのだろうが、どのようなものにすべきだろう?

それがどんな形のものになるとしても、安全を優先したものでなければならない。好むと好まざるとにかかわらず、人間というものは予測がつかないし、乗組員たちが経験するはずの心理的ストレスは相当なものだろうから、一部の人は堪忍袋の緒が切れてしまうだろう。

船内文化に対して、倫理的、宗教的、政治的、あるいは哲学的な理由から反発し、船や乗組員たちの健康や安全にとって有害な行動をする人も出てくるだろう。

誰かが不満を抱くようになったとしても、地球にいたときとは違い、その人はほかに行くところがないのだということは、忘れてはならない。そして、ワールドシップがいかに頑丈に設計されていたとしても、破壊行為をやると決意した人間の前で無傷でいられるわけがない。悪意を持った1人の人間が、宇宙船全体を破壊することもあり得る。

飛行機での旅行について考えてみよう。始まった当初は、チケットを購入すれば、それで飛行機に乗れた。空港では家族や友人たちが、駐機中の飛行機に向かうあなたに寄り添ってタラップの下までついて来て、見送ってくれたものだ。ところが、1960年代から70年代にかけてハイジャック事件が相次ぎ、空港の保安体制が厳しくなり、金属探知機が導入され、銃などの比較的見つけやすい武器の検査が始まった。

しばらくはそれでうまく行っていたが、2001年9月11日、破壊行為を行うと決意した集団が同時多発テロ事件を起こした。今では、航空機に乗るには、何種類もの身元確認を受け、全身を電波でスキャンした上でさらに金属探知機で検査され、場合によっては全身のボディチェックをされてようやく搭乗が許される。

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