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一生を宇宙船で過ごす人々が直面する問題とは? 何世代も続く「遠い恒星への旅」の倫理と哲学

東洋経済オンライン / 2024年6月18日 16時0分

粗暴な振る舞いをする乗客や、飛行中に危険の兆候が検知されたために旅客機が臨時着陸したというニュースは毎週のように起こっている。

人間の生涯よりも長い旅行期間

私たちは、それほど遠くない目的地に行くだけでも、数時間にわたるかなりの不自由を受け入れ、個人の自由をあきらめて、同乗者たちの安全を確保する覚悟ができている。

しかし、このような犠牲を生涯にわたって続けようという覚悟が、私たちにあるだろうか? そんな状況は、新しい家に向かう宇宙旅行というより、警察国家での暮らしのような感じがする。

旅のあいだに生まれる子どもたちについてはどうするのだろう? 旅行期間が人間の生涯よりもはるかに長いなら、一生を船内で過ごす世代が何世代も続くことになるだろう。

新しい世界の入植者にはなりたくないと思う人たちが出てくる可能性は否定できない。とりわけ、その人たちが、地球の広々とした海、青空、そして緑の大地のことを知ってしまったならば。彼らに両親や祖父母の夢を叶えろと強制するのは倫理にかなっているだろうか?

星間飛行に出発した勇敢な人々の子孫がプロキシマ・ケンタウリBに到着したところ、その土には、この系外惑星の固有種らしい見慣れぬ微生物が生息しており、それ以外の動物は見当たらなかったとしたらどうすればいいだろう?

人間たちは着陸を敢行し、そこに居住地を作り、人間と、その体に棲むバクテリアに加えて、ほかの動植物も意図的に地球から運んできて、この系外惑星に導入するのだろうか?

到着した人間たちが既存の動物がいることを発見した場合にはどうすればいいだろう? その動物は意識を持っていないが、やがて進化して意識を持つようになる可能性が排除できないとしたら? 

その場合、倫理の問題は一層難しくなる。彼らが次に何をするのか、誰が決めるのだろう? 移住者本人たちだろうか?

アメリカのテレビドラマ『スター・トレック』シリーズの「最優先指令」のようなものを打ち上げ前から準備しておくのがいいかもしれない。しかし、当初からワールドシップに乗っていた人々は「最優先指令」に同意していたとしても、彼らの子孫は、自分たちが生まれる前に定められたことに従うしかないのだろうか?

技術的困難は解決できるのか?

これらは大きな問題であり、そこにはさらに、答えるのも解決するのも容易ではない多くの課題が伴っている。そしてこれらのすべてが、今私たちが直面しているいくつかの技術的困難を先に解決しておかない限り、意味のないものになってしまう。

まず最も重要なのは、推進にまつわる技術的困難だ。カヌーの段階を脱却し、最初の帆船、あるいはエンジン付きのボートや船を作る段階へと進むには、私たちはどうすればいいのだろう?

(翻訳:吉田三知世)

レス・ジョンソン:物理学者、NASAテクノロジスト

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