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サイゼ元社長が目指した「飲食店版のユニクロ」 おいしい野菜を安く安定的に供給できる仕組み

東洋経済オンライン / 2024年6月18日 17時0分

イタリアでは、空き瓶を酒蔵に持っていくと、ワインを注ぎ入れてくれるのでそれを買う、という風景が見られます。イタリアワインはそれくらい身近な飲み物なのです。

少なくとも、高いお金を払ってかしこまって飲むものではない。サイゼリヤのメニューと価格には、正垣さんのそうした思いが込められています。

試食を重ねて「サイゼリヤの味」を知る

サイゼリヤの商品開発は創業以来、正垣さんの領域でした。

正垣さんは常人離れした味覚を持つ人でした。さらに困ったことに、彼の表現する単語が独特でした。

「濡れた新聞紙のにおい」「ガラスが細かく砕かれたものの食感」などといった食べ物ではないものの比喩や、「ウーッとする味」のように理解が難しい表現などがありました。

部下の中に社長の言うことを完全に理解しているスタッフがいればよかったのかもしれません。しかしそのような部下はいませんでした。そこで、当時、商品企画部長だった私が正垣さんの味覚をしっかりと理解する必要があったのです。

そのためにやるべきことは、一緒にいろいろなものを食べて表現を体験するしかありませんでした。既存品の改良品や新商品などをできるだけつくってもらい、それを試食することを重ねていきました。

正垣さんの味を理解するため、いろいろな店にも足を運びました。有名ステーキハウスのコーンがうまいぞと言われたら、それを食べるためだけに数万円出費することもありました。そのような努力を重ねてサイゼリヤの味の方向性が理解できるようになっていきました。

商品企画を務めていた数年のうちに、体重が約15キロほど増えました。そのため腰痛になり、杖を突いていた時期もありました。

私が社長、正垣さんが会長になってからの役割は次のように変わりました。正垣さんはまずいものを検知する能力に長けているので、味のダメ出しをする役割です。そして私は、「どうやってこの味を商品化すべきか」を考える役割でした。

採れたて野菜をメニューに加える

私が社長になって以降、力を入れたのが「野菜」です。入社当初から農業を担当し、その後も工場の立ち上げチームを率いていたことから、野菜の生産・加工には、改良の余地がたくさんあると思っていました。

農家に行ってまず驚くのは、野菜の味や食感です。スーパーで買う野菜とはまるで違うのです。

だから、そのままの野菜をお客さまに食べてもらおうというのが当面の目標になりました。「売れそうだからつくる」のではなく、「おいしいから食べてみて」というのがサイゼリヤの原点であり、繁盛店に共通する点です。

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