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「積極財政派」「財政再建派」提言に見る希望と絶望 「PB黒字化目標」に代わる新たな財政政策の指標

東洋経済オンライン / 2024年6月18日 10時0分

「失われた30年」に起きた逆説的現象とは(写真:78create/PIXTA)

本来であれば格差問題の解決に取り組むべきリベラルが、なぜ「新自由主義」を利するような「脱成長」論の罠にはまるのか。「令和の新教養」シリーズなどを大幅加筆し、2020年代の重要テーマを論じた『新自由主義と脱成長をもうやめる』が、このほど上梓された。同書著者の一人でもある中野剛志氏が、マクロ経済政策の視点から財政政策を論じる。

「積極財政派」「財政再建派」2つの提言

自由民主党には、積極財政派の財政政策検討本部(本部長・西田昌司参院議員)と財政再建派の財政健全化推進本部(本部長・古川禎久元法相)とが存在し、それぞれが岸田文雄首相に提言書を提出した。

民間が貯蓄超過の時は、政府が財政赤字になる理由

同じ政党内で、財政政策に関し、対照的な提言が行われるというのは、実に興味深い。議論もせずに見解を統一させるよりも、自由な論争を続けることのほうが重要であり、それこそが自由民主政治のあるべき姿であろう。

もっとも、政府の財政制度等審議会(財政審)や経済財政諮問会議の民間議員の提言は、自民党とは異なり、一枚岩になって、財政再建派のほうに与している。

例えば、財政審は、建議「我が国の財政運営の進むべき方向」の中で、こう述べている。

「既存の社会経済システムを大胆に変革することで、企業の投資を促し、民間主導の自律的な経済成長を実現していくとともに、財政健全化に向けた揺るぎのない姿勢を国内外に示し、財政に対する市場の信認を確保していくべきである。そのためには、現行の財政健全化目標(2025年度の国・地方のプライマリーバランス黒字化、債務残高対GDP比の安定的な引下げ)を堅持し、その実現に向けて、規律ある「歳出の目安」の下で歳出改革の取組を継続すべきである。(中略)現行の財政健全化に向けた取組を一歩も後退させてはならず、政府は高い緊張感を持って財政運営に臨むべきである。」

これに対して、自民党の財政政策検討本部の提言は、プライマリーバランス黒字化目標に「断固反対」だとして、財政審の建議と真っ向から対立している。

しかし、この提言を実際に読みもせず、「政治家によるバラマキの要求」などと侮ってはならない。というのも、そこに書かれているのは、簡潔だが、驚くほどレベルの高い理論的な内容だからだ。

財政政策検討本部の提言のポイントは、プライマリーバランス黒字化目標に代わる新たな財政政策の指標を提案しているところにある。

それは、「『ネットの資金需要』(企業貯蓄と財政収支の対GDP比)をマイナス5%程度に誘導し、維持する」という指標である。

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