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NHK「燕は戻ってこない」えげつないのに深いワケ 女性の貧困、代理母を描いた話題作を読み解く

東洋経済オンライン / 2024年6月18日 15時0分

リキのように、貧しいがために、本来望まない代理母という生き方を選択せざるを得ない者たちも、このように顧みられなかった子どもたちの末路なのではないだろうか。

根底には社会への厳しいまなざしがある

やがて子どものことに想いを馳せた人物が現れる。それは意外にも基であった。指導するバレエ教室で、期待されている優秀な少年の母が、学校を休んでまでスカラシップに挑む才能が息子には本当にあるのかと悩んでいる。彼女曰く、両親ともに突出した才能のない普通の人だから子どもにだけ才能があるとは思えないという。

すると基は「子どもはDNAの奴隷ではない」と発言し、自分で自分の言葉に驚いたように目を見開く。人一倍、DNAにこだわって自分の精子から妻でもない女性の子宮を借りて子どもを作ろうとしているのに。

科学技術の発展によって、子どもが喉から手が出るほどほしいができない夫婦や、子を持ちたい同性カップルや、性行為はしたくないが子どもがほしい人など、さまざまな欲望を実現することは悪いことではない。だが、そこには貧困ビジネスをはじめとした、行き場のない弱者たちをビジネスの対象にしている現状もあることを認識しないとならないだろう。

登場人物の言動のえげつなさを描きながら、根底には社会への厳しいまなざしがある『燕は戻ってこない』。ワーキングプアだとか妊活だとかジェンダーだとかキーワードをわかったようになぞるだけでない、想像もしえなかった生活者の存在を渾身で浮き上がらせる。

木俣 冬:コラムニスト

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