なぜ戦争に訴える?ロシアの根源感情を読み解く ロシア独特の「陰鬱」や「憂鬱」の背景
東洋経済オンライン / 2024年6月19日 21時0分
それゆえ、ロシアの「憂鬱」は、たとえばパリにいたボードレールのように文明化された都市的人間を襲う憂鬱とはまったく違っており、深い根源的な原始性から直接漂ってくる、人間存在そのものを襲う憂鬱であった。
だからこそ、逆にまたこの陰鬱な原始の森からの全面的な解放をロシア人は求める。そこに「自由への熱狂的な情熱」がでてくる。それは、西欧近代思想が理性の旗のもとに掲げた「自由への平等な権利」や「幸福追求の権利」などというものとはまったく違っている。自由と解放は、地下生活者が逆説において求める狂気というべきものであろう。それはロシア流の「革命の精神」なのである。
国境が確定しない不安定な国家
ロシア史をざっと眺めれば、ロシア的な憂鬱は、実に歴史的背景をもっていることがよく分かる。それはまずは何より、その地理的条件をみれば一目瞭然だろう。
時代区分を無視して大雑把にいえば、ロシアの東には、13世紀から17世紀初頭まで巨大帝国を作った騎馬民族のモンゴル帝国がある。西には、反宗教改革の戦闘教団というべきイエズス会のカトリック大国ポーランド王国と、13世紀以来のローマ・カトリック大国リトアニア大公国がある。
その北方にはドイツ騎士団がいすわり、大国スウェーデン王国がかまえている。ポーランド王国の背後に神聖ローマ帝国、後にはプロシアが控え、その南にはハンガリー王国とその後続であるオーストリア・ハンガリー帝国が横たわる。さらに南にいけば、イスラム教のオスマン帝国が陣取っている。
実際、13世紀から始まったモンゴル支配と時を同じくして、西のリトアニア大公国が、現在のウクライナ、ベラルーシからロシア西部に侵入し、14世紀にはこの地域を支配する。また、バルト海沿岸には、スウェーデン王国とドイツ騎士団が控え、海へのルートを確保したいロシアはこれらの国々とも戦わねばならなかった。
17世紀にはポーランドとの間に13年におよぶ戦争があり、18世紀に入るや、ピョートル大帝のもとで、ロシアはスウェーデンとの大戦を経験する。この戦争に勝利してバルト海沿岸は手に入れたものの、次は南方である。
スウェーデンとの戦争の後、18世紀を通じてトルコと戦い(露土戦争)、19世紀になると、クリミア戦争があり、また露土戦争が勃発する。ことほどさように、ロシアの歴史は、周辺の大国との戦争の連続であった。
長い間、これだけの巨大帝国、強国にはさまれた、国境が決して確定しない不安定な国家がロシアなのであった。だから、ロシア人の心の内には、常に周辺に脅かされるという底知れぬ恐れと、それに耐え忍ぶ途方もない忍耐力と、いっきに形勢逆転をはかる軍事力を手に入れ、勢力を拡張するという「力への意思」というようなものがあっても不思議ではない。
戦争とは祝祭である
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