1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

旭化成が「腎疾患薬1700億円買収」で見出す勝機 医薬品事業は大手不在のニッチ領域に絞り込む

東洋経済オンライン / 2024年6月19日 8時50分

旭化成がカリディタス社買収の発表に伴って開いた5月28日の会見には、工藤幸四郎社長(右から2人目)や医薬品事業を含むヘルスケア領域の幹部が出席した(写真:旭化成)

伝統的な石油化学(石化)事業が苦戦する総合化学メーカー。その中で旭化成の積極姿勢が目立っている。

【比較】総合化学メーカー5社で「PBR1倍割れ」企業を見てみた

5月28日にスウェーデンの医薬品メーカー、カリディタス社を約1739億円で買収すると発表した。スウェーデンの株式市場に上場する同社株と米国預託証券をTOB(株式公開買い付け)で取得する。7月18日から実施、9月中の完了を目指す。

TOB価格につけたプレミアム(上乗せ幅)は買収発表前の直近株価の8~9割。高値づかみとの声も聞こえてきそうだが、工藤幸四郎社長は買収発表日の説明会で次のように自信を示した。「社内でそうとう精査を重ね、当社の持つアセットと親和性が高いとわかった」。

ヘルスケア領域担当のリチャード・パッカー副社長も「医薬業界でのプレミアムとしてはそう高くない。80~100%が典型で200%もある。通常の幅に収まるプレミアムで納得感がある」と強調。旭化成ファーマの青木喜和社長は「売り上げ、営業利益の今後の推移を慎重に見極め『十分勝算あり』と考えて値付けした」と述べた。

他社では医薬品事業が「頭痛の種」

2004年設立のカリディタス社は2023年まで赤字が続いている。ただ、2021年から販売を開始した腎疾患治療薬「タルペーヨ」が着実に普及。昨年12月にはFDA(アメリカ食品医薬品局)から本承認を得るなど売上高の急成長が期待できる。

旭化成の業績に通年で寄与する2025年度には、のれんや無形固定資産の償却負担を勘案しても黒字化すると見込む。タルペーヨがピークを迎える2030年度以降は売上高が年間5億ドル超になるとそろばんをはじく。シナジーなどを合わせれば、旭化成の営業利益に200億~300億円の貢献となるとみられる。

旭化成が見せる自信とは対照的に、医薬品事業が頭痛の種となっている総合化学メーカーは少なくない。その典型例が住友化学だ。

上場子会社の住友ファーマが主力薬剤の特許切れにより、2023年度は売上高が前年度比で4割減。北米でのリストラ費用や減損の計上もあり、最終赤字は3150億円まで膨らんだ。同社の業績を取り込む住友化学も3118億円の最終赤字に転落した。

住友化学は住友ファーマに対して債務保証による金融支援を実施するほか、合理化支援など関与を強化する。再建を進めると同時に売却も視野に入れるが、売り先が見つからないのが現実だ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください