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コカコーラを日本一売った男の「営業力」の源泉 「雨風に曝され、つらい外回り」に先輩の教え

東洋経済オンライン / 2024年6月21日 18時0分

腕組みをしている主人の傍らで、奥さんは事情を察してきまり悪そうにこちらを見ています。在庫スペースを片づけて店を後にします。営業所に帰るクルマの中で、土居さんが話しかけてきます。

「どうだ、気分は。これでしっかりと我々の姿勢が相手に伝わったから、まぁよしとしよう」

「よしなんですか。正直きつかったです。事前に『覚悟して叱られろ』と言われていたからなんとか耐えられましたが、そうでなかったら『なんでこんなことを言われるんだ』と、さらに落ち込んでいますよ。第一、こちらに落ち度がある訳ではないですから」

この状況に釈然とせず文句も言いたくなります。土居さんは「悪い、悪い。でも、これで一番いいかたちで収まったから勘弁しろ」と涼しい顔をしています。

そう言われても何がなんだかわかりません。まぁ、すし安の怒りも収まったからいいかと、ひとまずホッとしてクルマを走らせます。

翌週、すし安の訪問日です。

前回の件があるのでなんとなく敷居が高いのですが、伺わないわけにはいきません。店のドアを開けると奥さんがいます。「また、何か言われるかなぁ」と、内心落ち着きません。

「先週は悪かったわね。先輩の方、あんなにきつく叱らなくてもいいのにね。だから若い人たちがついてこないのよ。それにしてもあなたのところは本当に仕事に対して厳しいのね。びっくりしちゃった」

あれ、様子がおかしいぞ。いつの間にか私の味方になっているような感じです。

「覚悟して叱られろ」の意味

「あの後、主人と2人であんたに悪いことしちゃったと話していたのよ。でも主人は『ちょっと叱り過ぎだけど、あれだけ厳しい先輩がいるから、ちゃんと仕事ができるようになるんだ』なんて言い出して、こちらの勘違いを謝らないのよ。ごめんなさいね」

「いえ、いえ、とんでもない。きちんとできていなかったこちらにも原因があるので……」と、曖昧に返します。

なるほど土居さんが「覚悟して叱られろ」「一番いいかたちで収まったから勘弁しろ」と言った意味がわかりました。

あの場で私が「これはそちらの勘違いです」と説明しても、火に油を注ぐようになってしまい、おそらく上手く収まらなかったと思います。

また、土居さんがすごい剣幕で私を叱ったのは、私たちの仕事に対する姿勢をお客様の目の前でしっかり伝えるいい機会だと考えたからではないかと思います。そのことがお2人の言葉からもうかがえます。

営業先で先輩からあれほど厳しく叱られたのは、後にも先にもこのときだけです。それはちょっとしたお芝居のような感じでした。でも、お客様にとってもこちらにとっても、ありがたい叱り方をしてくれたといまでも思っています。

※本文に登場する人物名、店名などは、実名・仮名を適宜使い分けています。

山岡 彰彦:株式会社アクセルレイト21代表取締役社長

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