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もはや日本は「景気後退」に入ったかもしれない 「インフレで売上増」のバイアスも消えてきた

東洋経済オンライン / 2024年6月21日 9時0分

「インフレがデフレマインドを変える」は幻想か(写真:Bloomberg)

6月10日に公表された2024年5月の景気ウォッチャー調査(調査期間:5月25~31日)が弱かったことについて、筆者は重く受け止めている。

【グラフ】エコノミストたちの最大の謎、「景気ウォッチャー調査」と「消費動向調査」の乖離の理由がみえてきた

具体的には景気の現状判断DI(季節調整値)は45.7(前月差マイナス1.7pt)と3カ月連続で低下、先行き判断DI(同)は46.3(同マイナス2.2pt)とこちらも3カ月連続の低下となった 。

今回の悪化によって現状判断DIは2022年8月以来、先行き判断DIは2022年7月以来の低水準となった。いずれも円安懸念や実質賃金の下落が不安視された2023年よりも前の水準まで低下していることが、筆者が今回の結果を重く受け止めている理由である。

景況感の支えがなくなってきた

足元では「円安によるインフレ再高進が消費を冷やす」という見方が多くなっており、景気ウォッチャー調査が悪化するのは自然なことのようにも思える。しかし、2023年は円安が進む中でも当該調査は堅調だった。

すなわち、今回の景気ウォッチャー調査が悪化した背景は、円安など実質賃金低下の問題以外の要因が意識されているということである。

コメント集をみていると、①政府による電気代・ガス代の補助策の停止や政局の混乱を不安視するコメント(政策要因)、②GW後の人流減少、などコロナ後の旅行需要などの息切れ(ペントアップ需要要因)、③インバウンド需要の回復一巡(インバウンド要因)、などが背景にありそうである。

逆に言えば、2023年までは円安や実質賃金の減少による家計の需要減を、①政策要因、②ペントアップ需要要因や③インバウンド要因が支えてなんとか景況感が保たれていたが、これらの終了・息切れによって支えがなくなっていると考えることができる。

言うまでもなく、いずれの要因も一時的ではないため、これらのマイナス効果が今後予想される賃上げのプラス効果を上回れば、日本の景況感は一段と弱くなる可能性がある。

コロナ禍以降の景気回復局面(2020年5月が景気の谷で、それ以降は景気拡大が続いている)はすでに終わってしまった可能性もある。

街角景気の調査である景気ウォッチャー調査と家計の調査である消費動向調査の乖離については、エコノミストの間では1つの謎となっていた。

しかし、データが蓄積されてきたことにより、この乖離の謎はほとんど解けてきた。結論を先に述べると、両者の乖離はインフレが理由である可能性が高い。両者の差とCPI(生鮮食品を除く財、前年同月比)を並べると、かなり近い動きをしている。

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