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ドライバー不在「AIカーレース」の息を呑むバトル 完全自動運転に向けたAI技術と人材開発に向け

東洋経済オンライン / 2024年6月21日 8時10分

アメリカ・グーグルの子会社、ウェイモ(Waymo)やゼネラルモーターズの子会社、クルーズ(Cruise)などによる公道試験走行でも、予期せぬ物との衝突が発生し続けている。2018年には横断歩道ではないところを、自転車を押して横断していた女性がウーバーの自動運転テストカーにはねられて死亡する事故があった。これは横断歩道でない場所を渡る歩行者を、ウーバー車のAIが想定していなかったことが原因とされている。また、今年5月にもウェイモの自動運転タクシーが、呼び出された場所に向かう途中で道路脇の電柱に衝突する単独事故を起こしている。

準備段階から始まるレース

完全自動運転車が広く普及するには、予測不能な咄嗟の出来事に対して、技術的な限界値を使い切って対処するエッジケースと呼ばれる状況を克服する必要がある。A2RLは、そんな状況に対処できる完全自動運転の技術開発を、モータースポーツ競技とAIによって促進する試みだ。

ASPIREのエグゼクティブディレクターであるトム・マッカーシー氏は「通常はドライバーがすべての操作を行うが、この競技では実際にマシンを動かすのはプログラマーの腕前だ」と述べ、「最終的にはマシンがトラックをできるだけ効果的かつ効率的に、そしてできるだけ速く走行し、他車などの障害物を回避し、それらのマシンを追い越す機能を導入する必要がある」と言及した。

マシンの物理的なセットアップとは異なり、プログラムを開発するにはそれなりの時間が必要となる。そのためASPIREは、あらかじめSF23をドライバーによって走らせたテスト走行のデータを各チームに提供し、さらにはレースシミュレーターを使用する機会を各チームに与えた。またレース開催前にはレース会場のヤス・マリーナ・サーキットを2週間貸し切り、各チームが実際にマシンを走らせながらAIやマシン制御プログラムを強化できるようにした。

なお、プログラミングの考え方次第で、マシンは攻撃的な走りをするようにもなるし、守備的な走りに徹するようにもなる。周囲のマシン状況に応じて他車を追い越すモードと、後ろから迫る他車をブロックするモードをAIが判断し切り替えられるようにもできるはずだ。

こうした一連の機能開発が、各チームのマシンの走り方の違いを生み出す要素となる。また、その開発過程が「ストレステスト」の役割をも果たし、公道上での自動運転車の安全性を向上させるとASPIREは説明している。

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