ドライバー不在「AIカーレース」の息を呑むバトル 完全自動運転に向けたAI技術と人材開発に向け
東洋経済オンライン / 2024年6月21日 8時10分
ところが、コースを半周ほどしたところで、こんどは首位のPoliMOVEがコーナリングを失敗しスピンしてしまう。全速力で追いついてきたUnimoreのマシンはレーシングラインを維持してコーナーに飛び込んだが、幸いにもマシン同士が接触することはなく、UnimoreはPoliMOVEのすぐ脇を通過できた。PoliMOVEのマシンは走行を再開できず、レースはここで一時中断されることになった。
約30分後、全7周に短縮されたレースは5周目から再スタートした。6周目には首位を走るUnimoreに対し、約1秒差で食い下がるTUMという構図ができあがったが、次の瞬間、このレース最大のハイライトが訪れた。
ドラマチックな展開へ
短いストレートから左へ切り込んでいくターン5へのアプローチで、首位のUnimoreが、ブレーキをロックさせて大きく速度を落としてしまったのだ。そこへ追いついてきたTUMの青いマシンは、開いたイン側を突くようにすり抜け、高い速度を維持してバックストレートへと走り去っていった。
TUMの華麗な走りは、終始ドタバタに思えたこの自動運転レースにおいて最も見応えある追い越しシーンとなり、当初は完走も危ぶまれた同チームが最初の勝者として、始まったばかりのA2RLの歴史に名を刻んだ。
A2RL初のイベントでは、すべてのチームがまだまだ未熟なソフトウェアの信頼性や技術的な問題に悩まされ続けた。それでも、AIアルゴリズムを搭載する自動運転レーシングカー4台を初めて同時にサーキットで競わせ、少なくとも一部のチームは、なかなか見応えのある速度で走れるようになっていた。今後、各チームともさらにAIを鍛え、アルゴリズムを改良していけば、何年か後にはマシンの限界に近い速度で、人間のドライバーさながらのバトルを見せる無人のマシンをコース上で見ることができるようになるかもしれない。
A2RLは、少なくとも4年間は年に1回以上のレースを開催すると述べている。ここから市販車にフィードバックされる技術が生まれてくることに期待したい。
タニグチ ムネノリ:ウェブライター
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