円安によって多くの日本人は再び豊かになる 今の円安に対して過剰に反応してはいけない
東洋経済オンライン / 2024年6月21日 9時30分
4月末~5月初旬に通貨当局(政府・日銀)が約10兆円規模の大規模な円買い介入を実施してから1カ月余が経過した。ドル円は5月に入って一時1ドル=151円台まで円安修正が進んだものの、現在は1ドル=150円台半ばから後半で推移している。
1985年以来の円安水準となる1ドル=160円に近づく中での当局の対応をうけて、「円安が行きすぎている」という認識がさらに強まった。「通貨安=日本衰退の象徴」との思いなどから、「円安が大きな問題なのだから、円安が止まらなければ、経済状況が悪くなる」との考えを抱く人が多いようである。
円安は対外的な価格競争力を強めている
だが、実際には、アメリカの金利上昇や金利の高止まり期待によって続いている円安は、「行きすぎている」とは言えないだろう。筆者は「円安は問題である」との議論に対して、強い違和感を覚えている。
2022年から円安に拍車がかかり、それが長引いていることは、日本経済の成長率を高めて2%インフレの定着をもたらす。大幅な通貨安は、完全雇用には至っていない日本経済にとっては望ましく、将来にわたって日本人の生活を豊かにする可能性が高いと考えている。
2024年の1ドル=150円台での推移は、IMF(国際通貨基金)が算出するドル円の購買力平価(1ドル=約90円)からみると、40%以上も割安である。
確かに輸入企業などからみれば円の購買力が40%目減りしているが、同時に、日本企業が供給する製品やサービスが40%以上割安であり、価格競争力が高まっていることになる。大幅な円安が日本の企業利益を過去最高水準に押し上げるだけではなく、日本企業の対外的な価格競争力を強めている。
現在、製造業では「中国離れ」もあって国内回帰が促され、サービス輸出である訪日外国人によるインバウンド需要も大きく増えている。企業の価格競争力の高まりは、製造業に加えて観光サービスなどの国内企業にも広がっており、こうした状況が数年続けば経済成長率を長期的に高めるだろう。かつてアメリカの背中を追って経済成長していた40年前のような輝きを、日本経済が取り戻しても不思議ではない。
歴史を振り返ると、現在のように購買力平価対比で明らかに割安だった時期は1984年以来である。このときは1985年のプラザ合意前の1ドル=235円前後だったが、合意による円高を経て、1986年は1ドル=160円付近までに達する急激な円高が起きた。日本の製造業はプラザ合意後に価格競争力を失い、多くの製造業は海外現地への直接投資に活路を見出した。
足元の円安進行に過剰反応をすべきではないワケ
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