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円安によって多くの日本人は再び豊かになる 今の円安に対して過剰に反応してはいけない

東洋経済オンライン / 2024年6月21日 9時30分

そして、円高への対応として、当時の政府は、拡張的な財政金融政策を講じた。ただ、この政策が経済活動を不安定にして株式・土地市場の壮大なバブルをもたらす一因になった。変動相場制のもとでは本来為替変動は避けられず、これを制御することはできない。国際金融のトリレンマが教える経済学の基本であるが、為替変動に配慮しすぎて金融政策運営に当時失敗したと位置付けられる。

現在のように、足元の円安進行に対して過剰に反応して、金融政策を引き締め方向に傾けることは、平成バブル期と同様、金融政策の判断ミスをもたらしかねないわけだ。

この意味で、円安進行を許容しつつ、日本銀行が2%の物価安定実現にむけて、腰を据えて政策運営を続けることが、日本経済にとって最善の策になる。そして、日本銀行による適切な円安許容姿勢が続けば、日本経済は今後5年以上にわたり、高成長を享受できるだろう、と筆者は考えている。

1990年代半ばからの日本経済の長期停滞期の経緯を、われわれは思い出すべきである。当時は日本だけがデフレに苦しんでいたわけだが、現在はこの流れが逆回転していると言えるからだ。

長期デフレが始まったきっかけは、1995年に1ドル=79円台まで急速に円高が進むなど、「苛烈な通貨高」が起きたことが大きかった。1995年時には、購買力平価と比べると実に2倍に近い超円高であり、必然的に多くの日本企業が価格競争力を失った。

ドル安円高がデフレ期待を高めたことで、その後のデフレと経済停滞を招く中で、マクロ安定化政策の失政が続いた。その結果、通貨円の価値が恒常的に割高な状況、デフレと経済停滞の負の構造が長期化する状況が2012年まで続くことになる。これが、「日本経済の失われた20年」の本質である。

日銀が引き締め政策に転じる可能性は低い 

デフレと通貨高がもたらす低成長均衡から抜け出すために、第2次安倍政権誕生とともに、2013年からの日本銀行による金融緩和が講じられたことをきっかけに、デフレと行きすぎた通貨高が解消され、日本経済はようやく成長軌道に戻りつつある。

失われた20年も含めた過去30年の日本の教訓を踏まえると、金融緩和によって円安が長期化していることはある意味当然だ。①長期の円安は脱デフレを伴う経済正常化にとって必要なプロセスであり、②円安の定着によって1980年代のように日本が他の先進国よりも経済環境がよくなる、ということである。

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