「親ロ国」に懸念、スペイン鉄道メーカー買収騒動 ハンガリー企業の提案に「技術流出」危機感
東洋経済オンライン / 2024年6月21日 7時30分
2024年3月、ハンガリーのコンソーシアムであるガンツ・マヴァグ・ヨーロッパは、スペインの鉄道メーカー大手タルゴ社の全株式を6億1900万ユーロ(約1050億8600万円、1株当たり5ユーロ=約850円)で買収するオファーを提示、3月7日にスペイン国家証券市場委員会(CNMV)へ買収に関する申請書を提出した。
【写真11枚を見る】スペインのタルゴ社が誇る独自技術の車両や買収に名乗りを上げたガンツの機関車、そして対抗馬のチェコ・シュコダ製車両など
EUの規則では、あらゆる買収に関して、ルールに則った手順を踏めば阻止することはできない。今回のハンガリーによる買収提案も、不備がなければスペイン側はこれを阻止することができない。しかし、スペインのオスカル・プエンテ運輸相は、あらゆる手段を講じてでも政府はこれを阻止すると述べた。
「親ロシア」国への技術流出を懸念
スペイン政府は、自国の技術が他国の手に渡ることを望んでおらず、とりわけタルゴ社が保有する高速鉄道技術が流出することに強い懸念を示している。
しかし、それよりもさらに大きな懸念がある。ハンガリーのオルバン政権は親ロシア派として知られ、EUに属しながらロシアとの強い絆が指摘されており、この点でスペインはタルゴ社がハンガリーの手に渡ることに危機感を抱いている。
ガンツ・マヴァグ・ヨーロッパには鉄道車両メーカーのマジャール・ヴァゴン(55%)とハンガリー国営投資ファンドコルヴィヌス(45%)が参加しており、これらはオルバン政権が支援している。
【写真】スペインのタルゴ社が誇る独自技術の車両や買収に名乗りを上げたガンツの機関車、そして対抗馬のチェコ・シュコダ製車両など(11枚)
タルゴ社は、軌間可変車両(日本でいうフリーゲージトレイン)のパイオニアとして知られるスペイン企業で、車軸のない連接構造など、独自の技術が特徴のメーカーだ。
近年は高速列車市場にも参入を試み、2021年にはスペイン鉄道(Renfe)へ106型高速列車「アヴリル」(Avril)を納入する予定となっていたが、開発の遅れによって2024年現在も引き渡しは行われておらず、スペイン鉄道はタルゴ社に対して1億6600万ユーロ(約281億8300万円)の違約金を科している。
こうした問題が明るみに出たことで、タルゴ社の株価は4%下落し、1株当たりでは4.20ユーロ(約713円)となった。前述の通り、ガンツ・マヴァグ・ヨーロッパは1株5ユーロでの買収を提案しており、これはかなり魅力的な提示と言える。
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