「宮藤官九郎作品は不適切」と言う人に欠けた視点 「ホモソーシャル作家」という評価は正しくない
東洋経済オンライン / 2024年6月21日 15時0分
『不適切にもほどがある!』との共通点
『池袋ウエストゲートパーク』は原作があった一方で、『木更津キャッツアイ』は完全なオリジナル作品である。そして、その後も磯山晶プロデューサー・宮藤官九郎脚本によるタッグは、基本的にオリジナル作品を作り続け、今年1月に同枠で放送された『不適切にもほどがある!』まで続いている。
その意味で、一連の作品群の根幹を成すような作品であり、さらに『不適切~』にも通じる共通点がある。
それが、主人公が死ぬ、という点だ。しかも、視聴者はそれを物語の終盤ではなく、序盤もしくは中盤で知ることとなる。つまり、いずれ死ぬ人が主人公のドラマとして見続けるのである。
宮藤官九郎作品では死が描かれることが多く、『11人もいる!』(2011年、テレビ朝日)は大家族を死んだ元妻が幽霊として見守る話だし、脚本に加え監督も務めた映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』(2016年)は、冒頭で神木隆之介演じる主人公が死亡。輪廻転生を繰り返しながら、地獄と現世を行き来する話だ。
同映画の公開時に、作品に死の匂いがすることについて、筆者は宮藤にインタビューで直接聞いたことがある。すると「死ぬことと生きることに、ずっと興味がある」としたうえで、「死に対する自分のスタンスや印象が、時とともに変わってくるからやり続けるんだと思います」とも語っていた。
さらに「『木更津キャッツアイ』のときは、生きてる人間の目線だったんですよね。まだ死が身近ではない目線で書いていたんですよ。今回(筆者注:『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』)は、自分自身もあのときよりも死に近づいているから、真面目な感じを回避したかったんですよ。きっと、この先どんどんそうなっていくんじゃないかと思います」と変化を語ったうえで今後を予想している(「宮藤官九郎が語る“主人公を死なせる理由”」、2016年6月24日配信)。
『木更津~』も、余命が延びたぶっさんが「ペース配分ってもんがあんだよ!」と憤るなど、決して大真面目だったわけではない印象だ。
特に最終回で、病院に運ばれたぶっさんを登場人物が囲む大団円のシーンは、死が間近に迫る悲しいシーンのはずが、笑いの入り交じった名シーンとなっている。
その絶妙なバランスは、宮藤官九郎の卓越した才能を感じさせるものであり、その後の作品での死の描き方にも通じるものである。
年齢とともに死との距離感が近くなり、真面目な感じを回避したくなってくる――。
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