プロ野球オールスター戦が盛り上がらない必然 交流戦で他のリーグとの対戦はすでに実現
東洋経済オンライン / 2024年6月22日 13時30分
NPBの「交流戦」の原型は、1997年からMLBで始まった「インターリーグ」だ。MLBでは1994年からサラリーキャップ制度やFA権の拡大を巡って選手会がストライキを行い、野球人気が下落した。これに危機感を抱いたMLBでは1997年からインターリーグを実施するようになった。ファンは「新しい対戦カード」ができたことを歓迎し、観客動員は前年の6016万5727人から6323万4442人へと増加した。
しかしこれによってオールスター戦の魅力が半減したのはMLBでも同様だ。以後、オールスター戦に選出されても出場を辞退する選手が続出した。
MLBの場合、オールスター戦は一時期を除いて1試合だから、選出されても出場できない選手が以前からいたので、出場辞退選手にペナルティを科すことはないが、2試合を行うNPBでは、野球協約で「オールスター試合に選抜された選手がオールスター試合出場を辞退したとき、その選手の出場選手登録は自動的に抹消され、所属球団のオールスター試合終了直後の年度連盟選手権試合(公式戦)が10試合を終了する翌日まで、再び出場選手登録を申請することはできない」と定めている。
筆者は毎年、オールスター戦を現地で観戦しているが、率直に言って「気の抜けたビール」みたいな印象があるのは否めない。
投手は、配球を考えず真っすぐを投げ込むし、打者はそれをフルスイングするだけ、作戦も、試合の機微も感じられない。試合中もにやにやと笑う選手が目立つ。
2013年、神宮球場のオールスター第2戦では、阪神・藤浪晋太郎が、日本ハム・中田翔に超スローボールを2球続けて投げた。大げさに避けるふりをした中田はバットを叩き付けてマウンドへ詰め寄った。あわや乱闘かと思えたが、二人は顔を合わせると笑顔で抱き合った。中田と藤浪は大阪桐蔭高の先輩後輩だが、球宴を盛り上げるためにこんな「演出」をしたのだという。ファン感謝デーならいざ知らず、伝統ある「球宴」では違和感でしかなかった。
また昨年のマツダスタジアムでの第2戦では、DeNAのトレバー・バウアーが球種の「握り」を相手打者に見せながら投球した。日本ハムの万波中正がバウアーから本塁打を打ったが、これも「茶番」のようなものだった。
オールスター戦の陳腐化
オールスター戦の主催者はNPB(日本野球機構)だ。NPBにとってオールスター戦の入場料収入や放映権収入は、貴重な収益源だ。
しかし、状況が変わりオールスター戦が陳腐化しているのは明らかだ。何らかの改革が必要なのではないか。例えば、同じくNPBが関与している「侍ジャパン代表」と「韓国、台湾代表」とのエキシビションマッチとか、「大学選抜」とNPBの「アンダー23選抜」の対戦とか、もう少し「プロ野球の素晴らしさ」を感じさせるマッチにすべきだと思う。
ファンの意見を取り入れて、何らかの改革に踏み出してほしい。
広尾 晃:ライター
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