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日本人は「賃金停滞」の本質をわかっていない 企業利益は急増しているのになぜ増えない?

東洋経済オンライン / 2024年6月23日 11時0分

図表2を見ると、2021年から2022年中頃にかけて、そのような事態が生じていることがわかる。

それに対して、輸入価格上昇による原価上昇が不完全にしか国内物価に転嫁されない場合には、輸入物価上昇の影響が支配的になって、GDPデフレーターーの伸び率はマイナスになる。

実際には、図表2に示すように、輸入物価が上昇したにもかかわらず、GDPデフレーターはあまり変化していない。

これは、輸入物価が高騰したにもかかわらず、国内物価が影響を受けなかったことを意味するものではない。輸入物価の上昇は、企業の売上価格に転嫁されて、国内物価が高騰したのである。

以上で述べたように、企業は、原価の上昇分をほぼ完全に売上価格に転嫁したと考えられる。だから、企業の粗利益(売り上げ−原価)を減らすような影響は与えていないと考えられる。

しかし、原価の上昇が粗利益を増大させることにならないのは、明らかだ。では、なぜ粗利益は増大したのか?

粗利益増加のうち円安に起因するのは?

考えられる1つの要因は、輸出額も円安の影響で増えたことだ。輸出数量が変わらず、またドル建ての輸出価格が変わらなくても、円安になれば、円建ての輸出額は増える。これは、企業の売り上げを増やし、粗利益を増加させる重要なメカニズムだ。

では、粗利益増加のうちどれだけが、円安に起因する輸出額の増加によるものか。

法人企業統計では、売り上げのうち、どれだけが輸出であるかは示されていない。したがって、上の問いに対する答えは、法人企業統計調査のデータからはわからない。

そこで、国際収支統計で国全体の輸出額を見よう。そして、輸出は全て法人企業によって行われたと仮定しよう(実際には個人や個人企業による輸出もあると思われるが、大部分が法人企業だと仮定しても、大きな誤差はないだろう)。

実際のデータを見ると、2021年1〜3月期から2024年1〜3月期までの増加額は、次の通りだ。

粗利益が16兆961億円、輸出が5兆6895億円。

つまり、粗利益増加の3分の1程度は、輸出の増加によるものだ。

では、粗利益増加の残り3分の2の原因は何か。

1つの可能性として考えられるのは、2022年10~12月期から輸入デフレーターーが低下して、GDPデフレーターーが上昇したことだ。これは、図表2からも明らかに読み取れる。

輸入デフレーターーの低下は、世界的なインフレの沈静化と為替レートが一時円高に動いたことによる。2023年1~3月期には、輸入デフレーターーの下落はかなり著しかった。

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