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「死ぬ権利」フランスで議論が進んでいる背景 高齢化が進む日本ではタブー視が続くが…

東洋経済オンライン / 2024年6月23日 11時30分

現在、国民議会で議論されている法案は、医師が患者の死を手助けすることを「積極的に」認めるものだ。「フランスの以前の法律はまもなく死ぬ人々のためのものだった。この法案は死を望む人々のためのものだ」と、法案に反対する国民議会議員のジャン・レオネッティ医師は『ル・フィガロ』で警告している。一部の緩和ケアに関する団体は、新たな法案は適切な医療ケアを受けることができない患者を社会が見放すための都合のいい手段だと見なしている。

一方、この法案は患者に自由を与えると称賛する人々もいる。そもそもなぜ苦しまなければならないのか?「あなたの人生の終わりについての決定権を医師があなたに返すことを拒否するのを受け入れるのはもうやめよう!」とフランスの有名作家であるアンヌ・ベールは書いている。ベールはシャルコー病を患っており、2017年に安楽死を受けるためにベルギーに行った。

「鎮静剤の投与を受ける患者の隣で一晩を過ごす人は誰しも次の3つの質問を次々に自問することになる。『この人は苦しんでいるのか?』『苦しみはどれだけ続くのか?』そして最後に、『この苦しみに何の意味があるのか?』」と、フランスのベテラン医師であるドニ・ラベイルは書いている。彼は患者の死を手助けしたことを公然と認めている。

「自殺を試みた人が病院に運ばれた場合、当人の明らかな死への意志があるにもかかわらず、病院はその人を救おうとするだろう? 私たちは患者の個人の自由と、社会が患者に対して有する共同体としての責任とのバランスをとらなければならない。それが非常に慎重を要するバランスだとしても」とレオネッティは警告する。

ヨーロッパではそれぞれの国が多様な法的枠組みを採用している。一方には、あらゆる形態の安楽死を禁止するアイルランドがあり、他方には安楽死を非常に幅広く認めるベルギーがある。

例えば、ベルギーでは鬱病に悩む青少年も安楽死の対象となっている。全般的に、ヨーロッパでは「死ぬための手助け」を受ける患者の権利への支持が拡大する傾向にある。スペインやポルトガルのようなカトリックの国々でさえ安楽死を認めている。

「死ぬ権利」の議論は日本ではタブーか

日本はこの問いによって最も影響を受ける国の1つだ。日本は急速に高齢化(すでに人口の29%が65歳以上となっている)しつつあると同時に、終末期に対処するための医療インフラは不足している。

例えば、集中治療室(ICU)の病床数は比較的少ない(1000人あたりの病床数は14.4だが、OECDの平均値は16.9だ)。だが、日本ではこの問いに関する公の議論は始まっていない。この身勝手で卑怯な沈黙の中で、医師と患者は残酷にも放置され続けている。そして彼らの行動には法的な影響が及ぶ可能性がある。

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